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素晴らしい学校生活を送りたくて!異能で友達って増えます?  作者: てりぃ
第2章 調子に乗るな勘違い野郎!
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2-4 金宮楓の気持ち

(はぁ…またやっちゃった。なんで素直になれないんだろ?あ、あと、顔がち、ち、近すぎだよっ!!)

 私は嬉しさと恥ずかしい気持ちで一杯になりながら、しゃがみ込みながら両手で頬を抑える。彼の事を考えると胸が熱くなり、いつもの冷静さも何処かへ旅立ってしまう。そう、私―金宮(かなみや)(かえで)は、新海(しんかい)隼人(はやと)に惹かれている。いや恋をしていると言ってもいいかな。普段隼人に対して、きつく当たってしまうのは好きの裏返し…そしてこの気持ちに気づいて欲しいけど、気づいて欲しくもない。そんな曖昧な感情に苛まれる。

 そして私はいつも自分の中に渦巻く、このモヤモヤをよく分からずにいた。

 いや、分かっていながらも目を背けているだけだと。


「はぁ…。こんなのじゃ振り向いてくれないよね…。だって隼人を前にするだけで心臓が普段より早く鼓動している事を自覚しちゃう。」

 私は誰の耳にも届く事のない、独り言を呟く。それは本音であり、誰も聞いていないと分かっているからこその吐露だった。

 そしてそのたび、私は隼人のことを「好き」なんだと再認識させられる。しかし私が隼人のことを好きになる資格はないと考え、いつもこの気持ちを抑え込もうとする。この繰り返し…。

(いつもは結局抑え込める事が出来ないんだけどね…自分自身で笑っちゃうよ。)

 すっと立ち上がった私は洗面所へと向かい、鏡の前に立つ。あと数cm程でキスが出来そうだった事を思い出して唇を名残惜しく優しく撫でた後、自身の髪を弄りながら思いに耽る。


「この髪、染めれないかな…。」

 そう、私は自分の今の髪の色を見るたび、過去を思い出す。あの日の事を…鮮明に…。決して忘れる事はない、自身の過ちを。

 一生忘れる事のないよう、反省し改善する為に。そして無意識的に記憶を反芻させ、意識を過去へと向け、放り投げる……。


―――――――――――――――――――――――――――


 少し昔の話をするね。

 私は実は今みたいに明るく振る舞ったり、元気な子じゃなかったんだ。寧ろよく隅っこに蹲ってよく泣いてた。いじけて、部隊の皆とも離れて。

 私は軍の中でも特別な部隊に入れられていたんだけど、そこは敵を倒したスコアで名前がついていた。つまり順位だね。隊は11人で構成されていていつも私は10位…。11人中の10位。

 コードネームはNo.10(ナンバーテン)

 異能(いのう)の種類としては珍しいらしく、最初大人たちには期待されていた。しかし期待には答えられる事が出来ないまま、どんどん塞ぎ込んでいってしまう毎日。

 そんな中、私より順位が下の子の事が少しだけ気になって仕方がなくなっていた。「自分より低い子なんて、どんな子なんだろう。」と。そんな単純な好奇心だけで構成された感情を抱いていた。

 そしてある日、そんな私に声を掛ける人物がいた。私が初めて聞く声。どこか安心出来そうな、優しくて明るい声だった。


「そこで泣いてても、何も変わらないぞ?…その後ろの木って、楓の木だよな?綺麗だな…。」

「え?う、うん。」

 そう私はよく楓の木の下にいた。隅っことここが私の居場所なんだと、勝手に決めていた。それは必然だったのかもしれない。自分と正反対。屋内ながらも、まっすぐ大きく堂々と伸びている木。とてもパワーと絶大な生命力を感じ、拠り所にしていたんだろうね。無意識に。

 それで私はその少年が何を言いたいのかいまいち理解出来ずに、その綺麗な深い深い青色の瞳を見据えていた。そして私に声を掛けてきた少年は、口を大きく開けて楓の木を見ていた。そして私に視線を戻して微笑み掛けてくる。


「綺麗な髪…あ、僕は新海(しんかい)隼人(はやと)よろしくね!」

「新海…隼人?」

 私にはそれが何か分からなかった。「コードネーム…だろうか?」当時の私はそんな事を考えていた。

 でも実際は違った。

 すると首を傾げて疑問に思っていた私に、答えを教えてくれるかの様に少年は答えてくれた。


「君に分かるように言うと…まぁコードネームみたいなものなんだけど…うん、そんな感じ。あ、ちなみコードネームはNo.11(ナンバーイレブン)。君と同じ部隊なんだ!」

 結局それを聞いても理解が出来なかった私を見てオロオロと慌てふためく様子は何処か可愛げがあり、私は久しぶりに笑った気がした。

 そんな出会い。そうこれが「彼」との初めての出会いだった。私に初めて舞い降りた希望、一筋の光。

 その後も彼は私を気に掛けてくれたのか、時折私を見かけてはちょっかいを掛けてくれた。


「また、泣いてるのか?」

「な、泣いてないもん!」

 私は目を擦りながら否定するが彼にはバレバレだった。


「嘘だ!ほら目元が赤くなってるじゃん…って、ごめんごめんごめん、俺が悪かったから殴るのやめてぇぇぇ!」

 私は気づいていた。これは彼なりの精一杯の励ましだった。今になって思うけどただ馬鹿にしてるだけだよね?隼人ったらそんなことしかできないんだから…。

 でも子供の頃の私にはそれで十分だった。素直にぶつかってくれる。そんな存在が私には必要だった。そして彼は会うたびに笑っていた。私を笑わせてくれた。私を…導いてくれた。

 彼に惹かれるがままの私には、彼が本当にNo.11(ナンバーイレブン)…つまり私達の部隊で11位だとは到底考える事は出来なかった。それ程私には彼が輝いて見えた。そして心の支えになってくれた。


「え?それが私の名前?」

「あぁ!金宮(かなみや)(かえで)。どうだ?僕なりに考えてつけたんだけど…気に入ってくれたか?」

「金宮…楓…。う、うん、とってもいい名前!…ありがとう隼人君!」

 後々聞いた話によると由来は、初めて見た時に髪がキラキラしてて綺麗だった事とお姫様みたいに可愛かった事で「金宮」。

 それと楓の木から「楓」。

 ふふっ、安直。それでも本当に嬉しかった。私はその名前を一生大事にするし、この名前を貰えた事を誇りに思った。それは彼から貰ったものだったから。

 そして私は彼に追いつきたい。一緒に横に並んでもっともっと私を見て欲しいと思うようになった。これは「好き」というより「憧れ」の方が近いと思う。そして私は彼の隣を歩いても恥じる事のないように努力した。


 努力した。


 努力した。

 激しい頭痛に耐えて泣きながら、嘔吐もした。死に物狂いで頑張った。あらゆる事に挑戦し、自分の糧としていく。

 気がついたら私は、周りからNo.3(ナンバースリー)と呼ばれるようになっていた。

 しかし私は焦っており、周りが見えていなかった。恋は盲目と言うが、それとはまた違った盲目に囚われた私は、既に彼が私を認めている事、しっかりと私を見ていてくれた事を見落としてしまう程、焦っていた。

 それはなぜか?

 そう、私は知ってしまったからだ。私と知り合う前から、仲良くしていた子がいる事を。

 多分あの子は彼の初恋の相手だろう。

 彼があの子に向ける視線は私を見る目と明らかに違うものが混じっているのに、子供の私でも気付いてしまったからだ。そして、そんな焦りを抱えながら私は任務に挑んでしまった。

 私はその日、普段よりも調子がよかった。最近は努力の成果もあり部隊に貢献出来ていた。そして普段より動けることに全能感を感じ、自分に酔っていた。そう、あの惨劇は私の慢心が全ての原因だ。


「いけない!隼人!楓のカバー!!」

「わかってる!でもこうも多いと近づけない!楓!前出過ぎだ!下がれ!」

「隼人君、私今日は調子いいから大丈夫!ほらっ!」

「楓!後ろっ!」

「え?………キャアァァァァ!!?!」

「楓えぇぇぇぇ!!!」「楓ちゃん!!」

「楓!……今助けるからな!!待ってろ!」

「待って隼人!危険過ぎるわ!」

「なら見捨てろって言うのか?僕にはそんな事できない!!」

「そんな事言ってないでしょ?一旦態勢を整えて…。」

「そんなのじゃ間に合わないよ!()()()()!!」

「ちょ、ちょっと話を聞きなさいよ。隼人!!隼人ぉぉぉ!!」

 そして、異形なるモノ達の攻撃をギリギリのところで耐えていた私だったが、意識を手放す直前に見たのは彼の「()()()」の片鱗だった。

 そして私が次に目を覚ますと施設のベットの上だった。

 ふと隣に視線を向けると、そこには重傷の彼の姿があった。私は責任を感じ、それが顕著に髪の変化となって現れた。

 そして更に私にとって、辛いものが待っていた。

 彼が日に日に、無機物が混じっていくような気がしたのだ。これは私の思い込みの可能性もあった。けど何かは確実に変わっていった。進行の具合はとても遅かったが確実に冷めた面を持つようになっていった。

 私はその代わりに次第に明るく振る舞うようになっていった。

 何かを償うように。

 代償を払い続けた。

 縛られ続けた。


 そして過去の皆の言葉が頭の中で反芻する。私は思わず耳を塞ぐ。しかし、脳内で響き渡る言葉は鳴り止む事はない。私は膝から崩れ落ち、床に座る。


「ねぇ()()()()……。こんな私が彼のこと、隼人のことを好きになってもいいのかな?」

 私は気がついたら涙を流していた。過去の過ちを(すす)ぐ事は出来ない。前を向く事しか私には出来ない。隼人の側で寄り添って決めた。隼人を縛り、縛られる存在だからこそ。そう、決心したはずだ。


「もう、泣かないって決めたんだから!楓!」

 そうやって自身の頬を軽く叩き、自身を鼓舞させる。私の顔には既に迷いは無かった。

 そして次のステップに進むかの様に、お風呂を沸かす事にした……。

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