五話
囚われの身となったジュンに道行く人々はヒソヒソと話し
「あんな子供のくせに悪いやつなのね」
と、言って、冷たい目で見たり、人によっては小石を投げたり、唾を吐きかけたりします。
そのようにして警察に着きました。
警察についたジュンは、自分の無実を訴えましたが無駄でした。
作り話だと言って相手にさえしてくれません。
警官達は
「現場に居たのが何よりの証拠だ」
と、言い張り、ジュンを殺人犯として、大きな岩戸の牢屋に入れました。
殺人犯といっても、あれほどたくさんの人を殺した極悪非道の人間と、警察では思っていますので、誤解が晴れないと確実に死刑になります。
まだ、若く幼い顔の残った、子供のようにあどけないジュンが、誤解の上で殺人犯として死刑になるには、あまりにも哀れすぎます。
ジュンは自分の身の不運を嘆き悲しみました。
(僕は何でこんなにもついていないのだ、母さんさえ生きていてくれていたら、こんな事にはならなかったのに、母さんが生きているときは、貧しかったけど幸せだったのに)
命がかかっているので愚痴っぽくなるジュンでした。
母さんの事を考えると悲しくなり、涙が自然と頬を伝わり流れます。
頬に涙の感触を感じるとなおさら悲しくなり、声をあげて男泣きしました。
幼い頃も
「貧乏の子、泣き虫、きたない」
と、言われたり、つつかれたり、からかわれたり、馬鹿にされたりしました。
貧乏ゆえの苦しみでした。
貧乏の家庭に生まれ、母の細腕で育てられたジュンはいじめられてばかりで、友達もいない寂しい子供でした。
しかし、ジュンは優しい子供でしたので、父や人を恨んだりはしません。
優しく純情で正直ものでした。
ジュンの母さんは、いつもジュンに言いました。
「ねえ、ジュンや、うちみたいな貧乏な子は、辛い事がいっぱいあると思うけど、この地球は太陽様がお作りになられたところです。
私たち人間も神々がお作りになられたのですよ。
神様から授かった命です。
だから、何か困った事に出合った時には、どのようにすれば神様がお喜びになられるかをよーく考えて、自分の生き方を決めるのですよ。
天道を歩けば必ず御手が延び、助けてくださいます。
人間は神様がお作りになられました、しかし、時として、サタンの爪にかけられた人間がいます。
だから、真面目な人間が苦労する事があります。
しかし、必ず道は開けます。
神様を中心とした考えで生きていれば、例えどのような罠、陰謀、策略、どのようにもつれた糸でもほどけます。
行き詰まるという事はないのです。
神の真理とはそのようなものです。
神様は何もかもお見通しだから、そのようになるのです。」
と、耳にたこができるほど何回も聞かされました。
「ジュンや神様がいらっしゃる証拠に、空気、水、食物を与えてくださっているでしょう。
そのような神様に人間は愚痴ばかり言って、何一つお返しもしないのに、神様は次から次へと、必要なものを与えてくださっているでしょう。
神様に感謝し、神様の愛を信じる事です。
神様の存在を信じる事です。」
と、言っていた、その優しい母の笑顔が目の前に浮かんでは消え、消えては浮かんでくるのです。
「母さん、母さん、僕はどうすればいいのですか」
ジュンの目に再び涙が光りました。
ジュンに見える母さんの微笑みは
「神様におすがりするのよ」
と、言っていました。




