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十三話

「ジュン起きれ、ジュン起きれ」


その声にびっくりして飛び起きたジュンに、手錠が待っていました。


ジュンは悪い夢でも見ているようでしたが、手錠の冷たさが、警察にとうとう捕まってしまった事を教えてくれました。


あれほど恐れていた警察に捕まったのです。


「手こずらせやがって」


と、警官がジュンの頭をつつきます。


警察に捕まったジュンは、死刑と決まりました。


捕まった日より三日目に、死刑台に上ることになりました。


普通は囚われの身となってから、死刑執行までは数年かかるのですが、裁判にかけられることもなく死刑執行と決まりました。


「ジュンは悪運が強く岩に穴を開け道まで作って逃げることの出来る、豪力だから早く首を切らないと、何をしでかすか分からない」


と、考えた警察側の仕打ちでした。


〜死刑執行〜


警察側の思い込みは一方的でした。


裏も取らず、裁判もせず、死刑台に送るとは、警察も警察だ、人の命の尊さ重さを知らない、人を裁くには、その資格すらない人たちだとジュンは断腸の思いがするのです。


ジュンが我欲のために人を殺し、ワインや作物を奪ったと、警察は思い込んでいますが、もし、そうだとすれば、盗んだ品物をどこに隠しているかぐらい探して証明するのが警察の義務なのではないか、それに、仲間がいるとも言っていながら、ジュンを殺せば仲間も見つからないのに、死刑執行を急ぐ警察のやり方に、誰もが疑問に思っていました。


ジュンが空を見ると、夜空に星が瞬いていました。


こうして星を見るのも、これが最後だと思うと涙で目がかすみます。


哀れな星の下に生まれたものは、このような苦しみを受けなければならないのだろうか。


しかし、この世の中は狂っている、罪もないものが殺人犯として、人々の目の前で殺されなくてはならないとは


(僕は、人々から我欲のために、何人もの人々を殺した大罪人として、憎んでも憎みきれない奴だとして、死んでいかなければならないのか)


と思うと、悔しくって悔しくって仕方がなく、泣けてくるジュンでした。


夜が明け、死刑執行の日がきました。


ジュンは十字架に縛られました。


そして、高々とかかえあげられました。


大勢の見物客です。


人々は何人もの人を殺したというので、どのような人間だろう、という好奇心が人々を、そこに集めたのでしょう、岩戸を壊して、ご丁寧に道まで作って逃げた、というのにしてはもやしのようにひろひろとしていて幼く、人々が想像していた人間とは、まったく違っています。


もっと、体も大きく筋肉ももりもりしていて、もっと悪相をしている、と思っていたのに、まだまだ子供なのにびっくりしています。


「まだ子供ではないか、この子が本当の犯人なのか?」


と、ヤジが飛びます。


見物客の思いは、みんな同じでした。


「あの子は、噂どうり無実なのでは?」


と、見物客は、ひそひそと囁き合いました。


大勢の見物客の中にヘンリー農園の人々の懐かしい顔がジュンの目に入りました。


心からジュンのことを心配そうに見守っています。


おばあさんの顔は見当たりません。


(おばあさんの病気はどうなんだろう。)


と、心配になりました。


ジュン自身、死を目前にしながらも、おばあさんのことは忘れていません。


苦しい時に助けられ、わずかな時間でしたが、幸せな日々を与えてくださった人だからでしょう。


銃を持った警官が六人、ジュンの前に並びました。


銃を見た瞬間


「僕は本当に死ぬのだ」


と、思いました。


無実の罪で死ななければならないなんて、こんなことがあっても良いものだろうか。


ジュンはそう思うと悔しくって悔しくってなりません。


涙が落ちそうですが、歯を食いしばり堪えました。


六つの銃口は、ジュンの胸を狙っています。


その銃口から、今、火が出るか、今、弾が飛び出すか、と誰もが、冷や汗をかいて眺めています。


ジュンもそうです。


ジュンは


(天国にいる母さんに会える。母さんに会える)


と、一心にそう思いました。


そう考えることによって、心の乱れを防ごうとしました。


死の恐怖から逃れようと懸命に試みました。


しかし、自分を見つめている鉄の銃口は、あまりにも冷たく恐ろしいものでした。


恐怖を抑えるには、あまりにもジュンは幼すぎました。


わなわなと震えています。


その様子を見て人々は、あまりにもジュンが哀れに思えました。


「あのような幼い子を殺さないでも良いではないか」


と誰かが叫びました。


「そうだ、そうだ、殺すな、殺すな」


と、騒ぎ始めました。


すると、処刑執行係員が空に向けて


「ズドン」


と、ピストルを発射しました。


人々は、耳に手を当てて怯えました。


「よいか、お前たちが同情するのはわかる。それほどこのジュンは悪党なのだ。弱々しく見せてはいるが、力持ちで何人もの人をいっぺんに殺したのだ。

みんな、よいか、警察に盾をつくなら同罪とみなす。ジュンには仲間がいる。その仲間を探している、だから、仲間とみなして、このピストルで撃ち殺すぞ、よいな」


と、怒声をあびせかけました。


六人の警官たちの方を向いて


「ヨーイ、ウテ」


の掛け声とともに


「ズドン」


六発の銃声が、同時に鳴り響きました。


十四話


誰もがジュンは死んでしまったと思いました。


ヘンリー農園の人達は泣いています。


町の人々も涙を流しながら、引き上げていました。


その時、誰かが大きな声で


「ジュンが生きている、ジュンは死んでいない、ほら、あれをごらん」


その大きな声で、誰もが死刑台の方を見ました。


ジュンは生きていました。


いったい何が起こったのでしょう。


ジュンを見るとジュンは大空に舞い上がって、わぁわぁ悲鳴をあげている、七人の警官をぼんやりと眺めているのです。


「奇跡だ、奇跡が起きたのだ。ジュンは無実だったので奇跡が起きたのだ」


人々はざわめき立ちました。


ジュンに銃口を向けた警官たちは、竜巻にさらわれました。


一瞬のうちに七人の警官は空高く舞上げられ、嫌という程地面に叩きつけられました。


死んだのはジュンではなく、ジュンを殺そうとした七人の警官たちでした。


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