暁に消える翼 18
巡には薬の事は伝えずに、ただ自分の父親を殺した暁を危険視した原八木が真相を隠す為に心中した、と伝える事にした。
大体間違ってはいないだろうと話し合う二人を見ながら、琉哉は原八木の最後の言葉を思い出す。
「……どうして皆、私に生きろって言うんだろう」
原八木だけではない。暁も琉哉を巻き込まない様にと、標も琉哉が死に行かない様にと、生かそうとした。
「あんたが自殺でもしそうな顔してるからじゃないか」
琉哉を見る目を細めて掟は言った。
「あー、うん。今はまだマシだけど、三年前にアキ姉の葬式で会った時とか酷かったよ。そのまま後追いしそうな感じで」
整も掟に同意した。
「……そんなに?」
そこまで酷い顔をしていたのかと、琉哉は両手で顔を確かめる。
「気にはなったけど、僕と顔を合わせたら必然的にアキ姉の事を思い出すだろうから、もう会えないだろうなーって思ってたんだ」
申し訳なさそうに整は言った。
「あんな再会の仕方になっちゃったけど、ルカ姉とまた会えて、僕は嬉しかったよ」
「みう君……うん、私も」
整の言葉に笑みを浮かべて答え、それから一晩泊まった標の部屋の扉に琉哉は視線を向けた。
標の件が無ければ、整と再会できなかっただろうし、無事でいなかったかも分からない。暁と共に死んでいたかもしれない。
数日会話を交わしただけの存在。
部屋の中は殆ど片付けられ、生きていた頃の生活の跡は見られなかった。
それでも、今この場にいられるのは標の存在があったからだと琉哉は思う。
標と、掟と、巡と。
「……ちゃんと、生きないと、ね」
直接的にも間接的にも自分を助けてくれた人達の為にも。
琉哉は改めて決意し、そう言った。




