暁に消える翼 14
整は去った後、掟はやっと口を開いた。
「明日仕事は」
「……え?」
「仕事」
琉哉はいきなり現実に引き戻された気分になったが、そういえば明日は月曜日だったと思い出した。
「仕事はある、けど」
さっきの今で明日普通に出勤できるかは分からない。
「休むなよ。黙ってたらあんたは考え過ぎる。仕事に追われてろ」
何という言い種だろうかと思ったが、確かに一日部屋に籠って延々と今回の件について思い悩みそうではある。
「……分かった」
と琉哉が渋々言うと、掟は当然といった様子で頷いた。
「あと今日はこっちのアパートに泊まれ」
「……は?」
「今の状態で一人にできないし海浦にも見張ってろって言われたしな。丁度標の部屋が空いてるからそこで寝ろ」
実に嫌そうに言われた。
「嫌なら無理に言わなくても」
「あんたに何かあったら俺が責められんだよ」
そう言われると、琉哉は承諾する他無い。
誰に、とは言わないが確実に今ここにいない人物には責められるだろう。
宿泊用の荷物を取りに、二人は琉哉のアパートへ向かう事にする。
「そういえば、今日の事巡ちゃんには――」
「言える訳ないだろ。お前の兄貴は実は病院に利用されて早死にしたんだ、なんて」
尋ねようとして、即座に否定された言葉に琉哉は息を飲む。
「……何処から、聞いてたの」
「標と中原が実験台にされてた、って辺りから」
掟は平然と答えるが、その話を聞いて何も思わなかった訳が無い。
琉哉の戸惑いに気付いた掟は、
「病院側の連中を恨んではいる。でもあんたを恨んでいる訳じゃない」
と落ち着かせるように言った。
「でも」
「あんたは巻き込まれただけだ。……それは全員そうで、最初に薬を渡した奴が悪いんだって分かってる。だけど、さすがにそっちまではまだ赦す余裕はない」
だからあんただけでも先に赦されておけ、と掟はよく分からない理屈でその話を終わらせた。




