暁に消える翼 12
琉哉の腕を掴んだのは掟だった。
その背後には整の姿も見える。
「――掟君、みう君」
二人の姿を認めた後、琉哉はもう一方、暁の腕を引いた人物を見た。
「原八木先生――」
腹部を血で染め、息を乱しながら、原八木は暁の右手のライターを掴んでいた。
左腕を暁の肩に回し、動けないように固定して、原八木は血の気の失せた顔で残りの三人を見た。
「……行きなさい」
視点が定まらない様ではあったが、強い言葉で原八木は促した。
「有馬院長は――僕が、殺した」
「――え」
原八木の言葉に、琉哉は目を見開いた。
「院長の、不正に気付いた、僕を、院長が自宅の包丁で刺し、僕がそれで、院長を刺した」
そういう事にしてくれ、と原八木は言った。
「暁ちゃんは、三年前に、死んでいる人間だから、罪には問われない。それでも、これ以上、罪を重ね、させる、訳には――」
原八木の声が、段々と間延びしてきた。
「勝手な事を、言って、申し訳ないと、思う、けど、頼む。……忘れろ、なんて、もう、言わない、から。覚えて、いて、くれて、いい、から。だから――琉哉ちゃんには、生きて、いて、欲しい」
琉哉に昔の呼び名で語り掛け、力が抜けたのか原八木の右手が緩み、暁の手の中から火の点いたままのライターが落ちた。
「――っ、くに、ひと、さ」
「行くよ二人共!!」
原八木同様に昔の呼び名を口にしかけた琉哉の声を、整が遮り、同時に掟が腕を引く。
そして、炎が広がり始めた屋敷を後にした。




