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暁に消える翼 11

 話を終えると、暁は徐にワンピースのポケットから何かを取り出した。


 彼女に似つかわしくない『それ』の蓋を親指で弾いて開けると、そのまま親指で摩擦を起こして発火させた。


「父さんが煙草を吸ってて良かったわ。ライターを探す手間が省けた」


 右手の中の物を見て、暁が呟いた。


 そこでやっと、琉哉は屋敷に充満する刺激臭の正体に気付いた。


「――灯油」

「うん、家でストーブに使ってたのが残ってたから、家中に撒いたの。――全部消す為に」

「全部、って」

「私の存在。父さんの不認可の新薬投与……はさすがに隠せないけど、黒翼症(副作用)の存在を隠す事は出来る」


 手元で揺れる炎を見つめながら、暁は告げた。


「暁――」

「ああ、大丈夫。無理矢理道連れになんてしないから。ただ最後に琉哉と話をしたかっただけなの。……三年前の、あんな別れ方のままにしたくなかった」


 だから、最後にちゃんと話せて良かったと暁は笑った。


「待って……待ってよ暁、こんな別れ方だって嫌だよ」


 琉哉は首を振ったが、暁は苦笑いを寄越す。


「やー、でも今の状態で見付かると逆にマズいでしょ私。これが一番良いんだよ」

「でも……」


 琉哉には反論ができない。

 暁は既に故人として扱われている。

 加えて父親の不正に殺人。


「お願いだから、覚悟のできてるうちに死なせてよ。じゃないと――また、巻き込もうとしちゃうよ?」


 暁の瞳が狂気の色に染まり始めた瞬間。


 二人はいきなり引き離された。

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