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黒い翼と出合いと別れ 7
「……お姉さんは、生きる事を諦めていた」
「――っ」
「ように、見えた」
女性は標の言葉に動揺した。
……ああ、そういう事か。
と、標が納得した様に呟いた。
「掟、分かったよ。僕が急に誰かを追い掛けたくなる訳が」
標は掟を見た。
「自殺願望だ。死にたいと思う感情が僕を引き寄せるんだ」
「……待て。話が唐突過ぎて理解できない」
掟は手を上げて標の言葉を止めた。
「そもそも何でそんな結論になるんだよ」
「病院で言われたんだ。偶に自分の意思じゃなく、無意識に普段とは違う行動を取ったりする事があるって」
標は一気に言う。
「それがもし『黒翼症』の影響だとしたら――あ」
と、不意に気付いた様に口を閉じた。
掟は疑問に思ったが、すぐに気付いた。
女性が居たという事を忘れていたのだ。見ると、女性は目を見開いている。
二人の目線に気付くと、女性はすぐさま視線を逸らした。
「……帰る」
言って女性は慌てた様に立ち上がり、玄関へと向かった。
「お姉さん」
標の声に、ドアに掛けてあったチェーンを外そうとしていた手がビクリと止まる。
「もしかして、『黒い翼』って知ってる?」
「……知らない」
硬い声で女性は呟いた。
「私は何も知らない」
振り向かずに言うと、チェーンを外し、ドアを開けて足早に出て行った。




