暁に消える翼 5
「……あれ……?」
有真家へ到着した琉哉は、門を通り抜け玄関の扉を開けたと同時に、違和感に気付いた。
三年振りに入った玄関ホール。
昔は雇いの人がいて、遊びに来た琉哉が挨拶をする程に親しくなった者もいた。
しかし現在人気は全くなく、値を張るらしい調度品が余計に寒々とした印象を醸し出す。
そして。
何処かで嗅いだことのあるような、独特の臭気がする。
例えば、冬に実家に帰った時良く嗅いだ様な――。
「琉哉」
名を呼ばれた事で、琉哉の思考は途切れた。
玄関ホールの中央、大広間と呼ばれる部屋に続く扉がいつの間にか開いており、懐かしい姿がこちらを向いて立っていた。
「――暁」
「琉哉!!」
琉哉が呟くのと、暁が琉哉に駆け寄ったのはほぼ同時だった。
暁はそのまま琉哉に抱き着く。
「琉哉、久しぶり! やっと、やっと会えた」
「暁……本当に、暁?」
「本物に決まってるでしょ!!」
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる友人に戸惑いつつ、琉哉も腕を回そうとして。
それに気付いた。
――暁が着ているのは白いワンピース。
――肩から袖に向かって不規則な紅い模様が描かれているのだが。
――所々黒く変色しているようなそれは、まるで――血を浴びたかのようで。
「……暁、何処か、怪我、してるの……?」
尋ねた声は、舌が乾いたように張り付き、たどたどしくなっていた。
「ん? 怪我なんてしてないけど……ああ、これ?」
暁は何でもない事の様に腕を見て。
「ただの返り血」
とあっさりと告げた。




