暁に消える翼 4
掟は苛立っていた。
「――早く出ろっての」
舌打ちをし、何度目かの電話を掛ける。
やっと繋がったのか、一瞬の雑音の後、
『ごめん掟君今立て込んでて。原八木センセイと連絡が――』
「うるせえこっちも急いでんだ!!」
慌てている様子の整の早口を遮り掟は叫んだ。
「孝和良琉哉が一人で有真暁に会いに行った!! 住所を教えろ!!」
携帯の向こうで息を飲む音が聞こえた。
次の瞬間。
『っ、前に中原君とルカ姉が会った公園、そこに今すぐ来て!!』
「おい――」
『アキ姉の家は公園の裏手にある、僕も行くから案内する、それじゃ一旦切るよ!!』
「海浦、」
一方的に整は話し、通話は切られた。
「――ああもうどいつもこいつも!!」
文句を言いながら、掟は取る物も取りあえずアパートを飛び出した。
『みう君の携帯に掛けたんだけど、繋がらなくて』
と琉哉が掟の携帯電話に連絡を入れたのは、整に電話を掛ける30分程前の事だった。
有真暁から連絡があり、会いに行ってくると、彼女は言った。
まさか一人で行く気か、と掟は聞いたが。
『みう君に連絡が取れない以上、そうなるかな。……さすがに掟君や巡ちゃんに付いてきてもらう訳にはいかないよ。今の暁はどんな行動を取るか分からないから。私だけなら、何とかなるかもしれないし』
琉哉はそう軽く返答を寄越した。
その口調に、逆に掟は不信を抱く。
出会ってからそう長くはないが、彼女は友人が関わると頑なに自分を責める態度を取っていた。
そんな相手、しかも精神が不安定だという人間に会いに行く事を、簡単に考えている筈が無い。
もしかしたら、と嫌な予感が脳裏を掠める。
「――標と約束しただろうが……っ」
知らずそう呟き、掟はぎり、と奥歯を噛み締めた。




