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暁に消える翼 3

 ――久々に聞いた琉哉の声。


 最初は緊張していた様子だったが、段々と落ち着いてきたようだ。


 そこで、暁は用件を切り出した。


「それで、いきなり電話した理由なんだけど。少しだけでも会えないかなー、なんて思ってさ」


 琉哉は戸惑った様だ。


『で、でもさっき軟禁状態って』

「止められなきゃ問題ないよ。だって現に夜中抜け出して高也君と密会してたし。あ、高也君が先走って迷惑掛けちゃってごめんね? 変な事しないように釘は刺してたんだけど」

『う、うん、それは……まあ、無事だったし』

「その件も含めて、ちゃんと顔を見て話をしたいんだけど……駄目かな?」


 琉哉は暫く悩んでいたようだったが。


『……今日日曜で仕事が休みだったから、着替えとかしてなくて。準備に時間が掛かるけど』

「いいよいいよ。琉哉がめんどくさがりなのは知ってるから」


 そう言うと琉哉はぐぅ、と唸った。


 ――ああ、変わらないなあ、と暁は思わず微笑んだ。


『私が住んでる場所は昔と変わらないんだけど、覚えてる? ――そう、公園の裏手の。玄関の鍵は開けておくから、着いたら勝手に入ってきて』


 それじゃあ、と、暁は通話を終えた。


 ――そして。


 手にしていた携帯電話の電源を落とすと、無造作に足元へと放り投げた。


「携帯ありがと」


 ヒト兄、と暁は声を掛けたが、呼ばれた彼は床にうつ伏せで倒れ腹部から血を流したまま動かない。


 その光景に動じぬまま、ちら、と暁はその奥で同じ様に倒れている人物を見た。こちらは仰向けで倒れている。

 全身を刺された上に腹部から包丁の柄が一本突き出てており、虚ろなその開いた瞳から、事切れているのは明らかだった。


「……どうして、こうなっちゃったかなあ……」


 遺体を見て呟き、ため息を吐く。


「とにかく、琉哉が来るまでに準備を終わらせないと」


 暁は傍らに置いてあった赤いポリタンクの蓋を開けると、よいしょ、と言いながらそれを横倒しにした。

 透明な液体が流れ、同時に独特の臭気が満ちる。


 何度か同じ事を繰り返すうちに、遺体の事など忘れていた。




 ――だから、原八木の指先が一瞬動いた事に、彼女は気付かなかった。

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