猫と天使と二重存在 19
――暁の飛び降り事件が起きた頃。
整は暁が入院した事を知ってはいたが、丁度中学入学を期に入部した部活の練習や合宿で行く機会を作れずにいた。
「僕も最初はアキ姉は死んだって聞かされてたんだ」
しかし法事の為に訪れた有真の広い屋敷の中。
一晩泊まり、深夜、トイレに行って部屋に帰る途中で。
死んだ筈の暁が突然目の前に現れたのだ。
それだけなら、亡霊――寝惚けて幻覚を見たと勘違いしていただろう。
しかし、暁を慌てて追い掛けてきた原八木の姿に、現実なのだと認識せざるを得なかった。
「院長の娘が入院していた病院から飛び降り。その飛び降りの原因が当時はまだ知られていない病のせい。しかも死んだと判断された後に息を吹き返していた……なんて、週刊誌のいいネタだよね? ……だから」
そこで言葉を区切り、整は琉哉を見た。
「丁度、患者の友人が最後の言葉を聞いていた事を知って、病院側は『入院していた患者が病を苦にして自殺した』という事にして、残る全ての情報を隠した」
「――っ、そんな……っ」
何も告げられず、利用されていただけだと知らされ、琉哉は言葉を無くした。
「ちなみに知っているのは去年癌で亡くなったアキ姉の母親を除くと、院長であるアキ姉の父親と、原八木センセイと、偶然知った僕の三人だけ。他の人は誰も知らない。……中原君は多分、僕と同じ様に、何処かで徘徊していたアキ姉に会ったんだろうね」
「お前が転校してきたのは中原が原因か」
掟が聞いた。
「うん、そう。原八木センセイが確認できた時には既に『あんな状態』で、いつルカ姉に危害を加えるか分からないから見張ってたんだ」
整は素直に認めた。




