猫と天使と二重存在 17
「『あの人』は、この人に会いたがってたんじゃないの? それなのに中原君が勝手な行動を取ったら、『あの人』が悲しむんじゃないかな?」
高也が言う『あの人』を引き合いに出し、整は言った。
「悲しむ……?」
高也は呟いた。
「悲しませるのは彼女じゃないか。僕はあの人が悲しむ原因を消してあげようと――」
「だからさ」
整は高也が言い掛けた言葉を遮った。
「何で中原君がそれを決めるの? 決めるのは『あの人』自身でなきゃいけないでしょう? 悲しませたくないなら何で『あの人』の考えを君が勝手に決め付けるの?」
「それは、『あの人』は優しいから――」
「優しいから、君が何をしても赦してくれるって?」
畳み掛けるように整は高也に言葉を返す。
「随分と君にとって都合のいい『天使様』なんだね」
嘲るような口調に、高也は顔色を変えた。
「お前に何が分かる!! 転校して間もないお前なんかに――」
「人の気持ちなんて分からないし分かりたくないけどさ。少なくとも『あの人』との付き合いは君より長いよ? だって」
一呼吸置いてから整は、
「僕、『あの人』のいとこだし」
と自分の正体を明かした。
「――っ!?」
「嘘だと思うなら本人に聞いてみたら? まあ君の身勝手な行動が『あの人』にバレて会ってもらえない状況になってなければいいけどね?」
整が言い終わるよりも早く、高也は身を翻し走り去って行った。
公園の入口に残された三人。
周囲は夕方という時間帯の割に人影はない。
「――ふう。いやー焦った焦った」
大きく息を吐き、初めに口を開いたのは整だった。
「切り札になるか分からなかったけど血縁関係ってのはやっぱ効いたねー。しっかし間に合って良かったー。何処も怪我してないよね? ルカ姉」
調子を取り戻したらしい整が心配そうに琉哉に聞き。
「あ? 何だよ知り合いかよ」
眉を顰めたまま掟が尋ねた。
「大丈夫だけど、君は――あ、もしかして」
見覚えのあるその表情に、琉哉は彼が知り合いだと遅まきながら認識した。
体格は変わったが、ふわふわしていそうな髮質と猫のように目を細めて笑う表情は三年前と変わっていない。
「みう、くん?」
かつての渾名で呼ばれ、整は笑顔を見せた。




