猫と天使と二重存在 16
「――そこまでだ、中原」
聞き覚えのある声が聞こえ、琉哉は視線を動かした。
琉哉の背後、少しばかり離れた場所に、掟と、同じ制服を着た少年が立っていた。
「……掟、君」
琉哉の呟く様な声に、掟は一瞬眉を顰めたが、中原と呼ばれた少年から視線を外す事は無かった。
……一体、何処から会話を聞かれていたのか。
「あれ、硲野君と――ごめん、君誰だっけ」
首を傾げ、中原少年は掟の隣にいた少年に聞いた。
「お互いあまり顔を見る機会が無かったから仕方ないよ。君は中原高也君だよね、僕は海浦整。転校生だよ」
「ああそうか、転校生君か」
「呑気に挨拶してる場合か」
二人のやり取りに掟が突っ込んだ。
「掟君、短気は損気だよ」
「うるせえ」
整の言葉にも苛ついている様だ。
「言いたい事は色々あるが、とりあえず聞きたい事がある」
高也を睨み付けたまま近付き、琉哉の立っている場所の右側を通り越してから、掟はやっと足を止めた。
「中原。お前の目的は何だ」
「あれ、聞いてなかったの? ……まあいいや。復讐だよ復讐」
高也は楽しそうに『復讐』の単語を繰り返す。
「『あの人』の代わりに、僕が『あの人』の願いを叶えるんだ」
「……ねえ中原君。それは『あの人』とやらが本当に望んでいる事なのかな?」
何時の間にか、整も琉哉の左前に立っていた。




