猫と天使と二重存在 13
「転校生だし疑うのは当然だよね。時期も時期だし」
「時期って何だよ」
「縞朔標」
転校生の口からいきなり死んだ友人の名前が出てきたので、掟は目を見開いた。
「……まあ間違ってないといえば間違ってないけど」
「どういう事だ!!」
「落ち着いて。ここ教室」
思わず立ち上がり叫んでしまった掟に、整は動じる事なく窘めた。
二人の声がはっきりと聞こえる範囲に生徒はいなかったが、時間が経った教室にはそこそこの人数がいた。
全員が自分を見たので掟は一瞬たじろいだが、『なんだ掟か』と言う風にあっさりと視線を外された。
「…………」
「こういう時ツッコミ担当というか逆ギレ担当は助かるよね」
「誰が逆ギレだ」
掟は転校してきてまだ日も浅いのに何故かしたり顔で言う整の頭を鷲掴みにした。
そのまま怒りを掴んだ右手に込めていく。
「ちょ、痛い痛いマジで痛いからっ!!」
整が涙目になってきたので掟は手を放した。
「で? お前は標の事で学校で聞いた以外の事を知ってるのか――いや、標と切り裂き魔に関連があって、お前は詳しく知ってるのか、と聞くべき、か?」
途中で考え直して掟は聞いた。
「あー、痛かったー……標君と切り裂き魔、というよりは三年前に起きた『黒い翼』の件でとある女性が狙われてる事を知ってる。気付いたのは昨日だけど」
頭を擦りながら整は答える。
――まさか、と掟は思い、確認の為にもう一つ質問をする。
「昨日、って」
「昨日の切り裂き魔事件。犯人はこの高校の制服を着ていた。ちなみに黒猫が襲われた理由は分からない。特に意味が無いのかもしれないし個人的趣味なのかもしれないし。でも今回の目的はとある中学生の女の子に自身を目撃させる事。そして羽根――『黒い翼』も」
顔色を無くした掟に整は言い。
「今はまだ無事だよ。彼が事を起こすなら放課後、あの人の仕事が終わる時間だと思う。多分、日中は体調が良くないんじゃないかな」
「……つまり、中原の本当の狙いは」
「うん」
頷き、整は告げた。
「彼の狙いは孝和良琉哉さんだ」




