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猫と天使と二重存在 11

「掟君おはよういつもより早いねー。てか何で机に突っ伏してんの眠いの?」


 頭上から明るい声が降ってきたので、億劫ながらも掟は顔を上げた。

 視界に入るのはやや癖っ毛の茶髪と猫を思わせる吊り目と口元。


 ――海浦(みうら)(ひとし)


 少し前に転校してきた、掟のクラスメイトである。


 彼は転校初日も、表裏も邪気もない笑顔で隣の席の掟に話し掛けてきた。


『初めまして宜しく硲野君。渾名は『カンペー』で良いかな?』

『良い訳ねえだろ』

 最初の会話がこれである。


 変な渾名を付けられる位なら、と苗字ではなく名前で呼ばせる事にした。掟自身は相手を苗字で呼んで整に抗議されたが聞き流した。


 内容はともかく、普通に会話をしている二人に、それぞれ別の理由で近付くのを躊躇っていた他のクラスメイトも何時の間にか会話に加わっていた。


 それには感謝しなくもないが、整の感性は独特らしく、偶に変に斜め上な会話を投げ掛けてくるのが難点だ。


 ――何処となく、標を思い出す。


 全く共通点は無いのに不意に思い起こされる感情を振り払うように、掟は身体を伸ばした。


「あー、おはよう海浦」

「整で良いって言ってるのに」


 整は口を尖らせて言うと、


「今日もお休みかな」


 と掟が見ていた席を見て呟いた。


 ――その席の主の名は中原(なかはら)高也(たかや)


 病欠中のクラスメイトである。

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