猫と天使と二重存在 6
歩く事十数分。
掟は自分の住んでいるアパートに到着した。
「…………」
見ると、入口の看板を琉哉は無言で眺めていた。
「……こ」
「『こがそう』だからな」
琉哉が何か言い掛けたのを、掟は即座に遮った。
看板には『古我荘』と書かれている。
琉哉が何を言おうとしたのかは見当が付いている。かつて標も口にした。正直掟も一瞬思った。だが口にしてはいけない。何だか現実になりそうな気がするからだ。
「こっちだ」
胡乱な思考を切り捨て、掟は自室へと足を向けた。
階段を昇り二階へ、そこから奥の203号室が今住んでいる場所である。
「…………」
玄関に鍵は掛けて来なかった。何故なら留守番をしている人物がいるから。
しかし掟にとってはそれが何よりも問題だった。
扉の向こうから邪悪な気配を感じる。……それが掟の気のせいなのは分かっている。だが、そう感じてしまう程に、中にいる人物は掟にとって恐ろしい。
「掟君?」
玄関扉のドアノブに手を掛けたまま固まった掟に、琉哉が不思議そうに声を掛けてきた。
「…………」
その声に押された訳でもないが、覚悟を決めて掟はドアノブをゆっくりと回した。




