猫と天使と二重存在 5
「背中に、羽根」
呟き、琉哉は疑問に思った。
「でも、犯人は制服を着てたんだよね?」
「巡曰く、コウモリの翼みたいなものが犯人の背中に生えていたらしいけど」
「何かのコスプレとか」
「普通の制服で?」
掟の言葉に琉哉は唸る。
「そもそも何で犯人は制服を着てたのかが分からない」
次いで言われた事に一瞬意味が分からなかったが、すぐに理解した。
制服を着ていた、つまり何処の高校の生徒かバレてしまう。
「実は見バレ防止に別の高校の制服を着ていたとか」
「それなら私服でも構わないだろ。わざわざ制服を調達する理由は?」
「うーん……掟君の高校の生徒、もしくはその中の特定の誰かに誤認させたかった、とか」
「じゃあ『羽根』は?」
「わざと見える様に制服の上から背中に貼り付けた、とか……」
言いながら琉哉はある人物を想像した。
背中に『翼』の生えた、掟の高校の生徒。
巡の兄。
そして犯行現場を目撃したのは、巡である。
「まさか、わざと巡ちゃんに見付かる様に犯行に及んだ? 標君に誤認させる為に」
「それは俺も考えた。が、巡に否定された。『標とは体格が全然違いました。仮にも家族である私が誤認する訳がありません』とか嫌みったらしく言われた」
とても苦々しげに掟が言う。
「ならただの偶然……?」
「偶然にしてはわざとらし過ぎる。とりあえずは一人にならないように、って巡は言われたらしいけど」
掟は何度か『〜らしい』という言葉を使っていたが、今の『らしい』は何故かとても重みがあった。
「何かあったの?」
「現在進行形でな。……あーくっそ、本気でアパート帰りたくねぇ……」
掟が立ち止まったのは説明の為だけではなかったらしい。
琉哉は嫌な予感がした。
なのでこのまま帰ってしまおうかと考えたが。
「帰るなよ」
自分だけ逃げるなんて許さない。
と、言葉と視線で告げられ、琉哉は諦めて掟と共に再度歩き出した。




