無意識の理由
本編3・4話の標視点となります。
――気が付いたら、誰かの後をつけていた。
そんな経験を何度かした事がある。
友人に声を掛けられるまで、ずっと自分で気付かなかった。
「――い、おい標!!」
「――っ!?」
……ああ、まただ。
確か僕は同級生の姿を見掛けて……そこからの記憶が無い。
今までの経験からして、その同級生の後をつけていたのだろうけど。
「あー、ごめん掟」
何はともあれ、友人に謝る事にする。
「ん」
何でもない様に軽く頷く掟。
こんな異常な行動にも慣れてしまった友人の態度に、申し訳ない思いで他に何も言えなくなる。
それを察しているのかいないのか、
「さっき追い掛けたの、中原だよな。あいつ病欠してなかったっけ?」
と掟が話を振ってきた。
「ああ、やっぱり中原君だよね?」
高校に行く回数が少なくて、クラスメイトの顔と名前がまだ完全に一致していなかったが、掟が言うなら間違いない。
「でも確かに何かふらふらしてたっぽいよ。病気かはともかく、体調悪いのかも」
そんな雰囲気があった事を思い出し、掟に言った。
「ふうん? なら呼び止めておけば良かったか」
中原君は既に僕達の視界から消えていた。
「次に見掛けたらそうしよっか」
そう答え、僕は掟と共に当初の目的であるコンビニへと向かった。
コンビニの中へ入ると、丁度会計を済ませた女性が入れ替わりに出て行った。
――あ。
無意識に、でも視線がその人に向くのを自覚した。
何の特徴もない、いかにも散歩のついでに来たような地味な姿なのに、目が離せない。
――追い掛けなきゃ。
何故かそう思い、追い掛けて、路地裏の通路に差し掛かった所で追い付き、伸ばした右腕が彼女のそれに触れた。
街灯は背後にあるので僕の姿は彼女には黒い影にしか見えないだろう。逆に僕には彼女の顔がよく見えた。
目を丸くして僕を見るその表情。
――そこから先、掟が探しに来てくれるまでの間の記憶が無い。
どうやら路地裏に引き摺り込んで首を絞めてしまっていたらしく、見ると確かに彼女は目を閉じて動かない。
掟が息があると言うので、身勝手ながらホッとした。
だが掟は彼女をその場に置いて立ち去ろうとする。
慌てて止めるが、確かに気付かれたら厄介だ。でも意識の無い女性をこのまま放置して良い筈がない。
だったらどうすれば良いのか、僕は悩んだ。
――彼女をこのまま放っておけば、誰かに見付けられる?
――でもそれは何だか嫌だ。
――他の誰かに見付けられてしまうくらいだったら、いっそのこと――。
また意識を飛ばしていたのか、掟に声を掛けられて僕は我に返った。
先程とは打って変わった掟の態度に、やはり何かしたのだと思いはするものの、女性を放置して帰るよりは良いだろうと無理矢理納得させた。
掟に背負われても尚目覚めない彼女を眺めつつ。
不思議とその女性から目が離せない事を僕は自覚した。




