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黒い翼と出合いと別れ 31
「……駄目だよ」
言って、標は去ろうとした琉哉の腕を掴んだ。
「お姉さんは何も悪くないんだ。だから、自分だけで抱え込まないで。独りになろうとしないで」
「……何を――」
言っているのか、と琉哉は言おうとして。
標の手に力が入っていない事に気付いた。
振り払おうと思えば簡単に振り払えるであろう程に、掴んでいるというよりも触れているだけの様に、弱い握力。
言葉を失った琉哉の様子に気付いたのか、標は困った様に笑った。
「僕には時間がないけど、お姉さんの時間はまだきっと終わらない。――だから忘れないで、僕の事を。僕の言う事を。自分の所為にしないで。でもなくさないで。ゆっくりでいいから」
――生きてみてよ。
標は自分より歳下の子供に言い聞かせる様に、琉哉へと言った。




