黒い翼と出合いと別れ 30
「そっか。それじゃあ標君は、こう言うのもなんだけど、もう大丈夫なんだね」
琉哉は笑みを浮かべて言った。
――上手く笑えているといい。
そう思っていると、標が真剣な表情をした。
「大丈夫、って言うとなんか変な感じだけど、うん。死に急ぐのは止めた。……だからお姉さんも、一緒に生きよう?」
「……え?」
何を言われたのか分からず、琉哉は戸惑った。
「お姉さんの時間は友達が死んだ時のまま止まってる。だからさ、お姉さんも一緒に前に進もう? 僕がそう思えたんだから、お姉さんも大丈夫だよ」
「でも」
「でも?」
「私は――」
言い掛け、何を言うべきか言葉に詰まった。
……今、自分を否定すると、標の決意を否定してしまう。
しかし、ただ惰性に生きてきた時間を変える事は難しい。
自分で死ぬ事ができないまま、三年前の罪を抱えて停滞しているだけの日々を。
「……ごめん。気持ちは嬉しいけれど、今更私は変えられない」
考えたが、きっぱりと琉哉は首を振った。
「お姉さん」
「やっぱり原八木先生の言う通りだ。私は標君の邪魔になる」
言って、琉哉は椅子から立ち上がった。
「お姉さん!!」
「標君が暁と同じ思いをしない様に、掟君が私と同じ思いをしない様に、私はもう君達には関わらない」
標の声を無視して告げ、笑みを浮かべた。
「短い間だったけど、会えて良かったよ。これは本当」
今度は、素直に微笑む事ができた。




