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黒い翼と出合いと別れ 28
「あ、お姉さん」
病室に入ると、標がベッドに起き上がった状態で笑顔を向けてきた。
「ありがとう掟、お姉さんを連れてきてくれて」
「……別に」
琉哉とは反対側の方向へ顔を向けたので、どんな表情をしていたのかは分からなかった。
「立ち話も何ですので、どうぞお座りください」
巡がパイプ椅子を一脚だけ出し、琉哉に勧めた。
「…………」
掟がそんな巡に何か言い掛けたが、即座に諦めた。
「あ、ありがとう」
若干掟が気になったが、折角勧められたので、大人しく琉哉は椅子に座った。
その様子を何故か巡は満足そうに見てから、自分が座っていたのであろう、ベッド脇にあったもう一脚の椅子を琉哉の隣に寄せて座る。
そして掟は自分で椅子を持ってきて、巡とは反対側に座った。
二人に挟まれ、標を含めた三方向に琉哉が囲まれた様な状態である。
何故か琉哉は逃げ出したい気分になった。
しかし、それではここまで来た意味がない。
「それで、あの、標君……えっと」
口に出したものの、話が続かない。
「うん」
返事をして、標が琉哉に向き直った。
そして、
「ごめんねお姉さん」
と謝ってきた。




