表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/81

黒い翼と出合いと別れ 26

 ――夜、標の病室。


 原八木は標にある事を告げた。


 標には言わない方が良いだろうと思い、ずっと黙っていたのだが。


 彼女――孝和良琉哉が関わっている以上、標を有真(ありま)(あきら)の二の舞にする訳にはいかない。


 だから、原八木は標に尋ねた。


「もしも、生き長らえる方法があるとしたら、君はどうする?」


 と。


 標は眉を顰めた。


「この病には治療法が無いと――」

「治療法は無い。……それは、治療とは言えない」


 言って、原八木は視線を標の背に向けた。


「生き長らえる方法とは、その腫瘍、『翼』を切り落とす事だ」


 何か言おうとした標を「ただし」と原八木は遮る。


「命が助かるだけで、君が『君』として元の生活に戻れるかは分からない」

「……どういう事ですか」

「……原因は分からない。しかしどうやら、精神に異常をきたしてしまうらしい」

「……それは――」


 標は病が発覚してからここ数日、意識が途切れる時がある事に気付いていた。


 大体が掟が側にいるので事なきを得ていたが――琉哉を殺しそうになった事もある。

 ……きっと、病の影響なのだろうと思ってはいたが。


 今現在ですらそんな状態なのに、更に悪化するというのだろうか。


「…………」


 原八木を見つめたまま、標は暫し考えた後、答えた。


「僕は、もうこれ以上、誰かに迷惑を掛けたくはありません」

「標君……」

「それに、僕が『僕』で無くなるなら、生き長らえる意味が無い」


 標ははっきりと告げた。


「どちらにせよ生きられないのなら、僕は『僕』として死にたい」


「…………、君が、そうしたいのなら、もう止めないよ」


 医師としても、人としても。


 そう、原八木は呟いた。


「先生」


 病室を出て行こうとした原八木に、標は聞いた。


「今の話、琉哉さんは知っているんですか」


 知らないに決まっている。

 知っていたら、琉哉は自分に告げていただろうと標は思う。


 本当に聞きたいのは、『翼』を切り落とした前例があるかどうか、という事だった。


 原八木は病院の入口で立ち止まると、


「……君が本当に知りたい事には見当が付いている、が、答える事はできない」


 すまない、と付け加え、そのまま振り向かずに病室を出て行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ