黒い翼と出合いと別れ 20
「……どういう、意味ですか」
琉哉は動揺した。
「君はまだ、三年前の事を悔やんでいる。そうだろう?」
原八木はじっと琉哉を見つめている。
「でも、標君は暁ちゃんじゃない。自分が後悔しているからといって、彼を逃避の理由にしてはいけない」
「何を、言って」
「君が死んだって、今更何も変わらないんだよ」
その言葉は、琉哉の思考を停止させた。
「暁ちゃんは戻ってこないし、掟君が君と同じ思いをする事になる。……自己満足の為に、誰かを犠牲にしてはいけない」
自己満足。
確かに、そうかもしれない。
自分を許して欲しくて、許されたくて、標の手を取ろうとしたのだ。
「……君はもう、彼らには近付かない方がいい。お互いの為にも」
原八木が琉哉の事を心配しているのは声音で知れた。
だが、琉哉には『お前はもう部外者だ』と暗に示唆しているようにも思えた。
「……私、帰ります。……もう、彼らには近付きません」
原八木がどんな表情を浮かべているのかは見たくなかったので、琉哉は顔を伏せたまま、彼に背を向けた。
そのまま通路の角を曲がりかけ、誰かにぶつかってしまった。
「あ、すみませ――」
謝ろうとして、相手が誰なのか気付くと琉哉は顔色を変えた。
掟が、気まずそうに立っていた。
聞かれた……!?
「――っ」
掟から視線を逸らし、琉哉は足早に病院を出た。




