黒い翼と出合いと別れ 2
「は? 翼?」
標が何を言いたいのか、掟には理解出来なかった。
「『黒翼症』って言うんだけどさ……ちょっと、これ見てくれる?」
標はおもむろに着ていた服を脱ぎ、上半身裸になると背中を掟に向けた。
「――!?」
掟は息を呑んだ。
標の背中、左右の肩甲骨の下に、それぞれ黒い翼のようなものが生えていた。
黒い翼と言うので掟はカラスの羽根を想像していたが、コウモリの翼を少しボロボロにしたような形状をしていた。
「な……」
「前から背中の肩甲骨辺りが腫れて痛痒いっていうか、違和感があったんだけどさ。虫に食われたかなーって思って気にしてなかったんだ」
でも、と標は服を着直しながら言う。
「卒業式の後、家に着いたら急に具合が悪くなって。倒れたらしくて、気が付いたら病室にいたんだ。で、一日入院したら次の日、背中にこんなのが生えてた」
標は掟に向き直った。
「病気なんだって。何年か前からこういう人が増えてきてるらしいんだけど、未だに治療法が見付からないとか」
「……」
「それが『黒翼症』。ちなみに致死率100%だって」
掟は、標に対して何も言う事が出来なかった。
「でさ、どうせ死ぬなら好きな事して死にたいじゃん?」
標はそんな掟にお構いなしに話続けた。
「だからさ、掟に協力して欲しくて、今日ここに呼んだんだ」
掟に向かい、笑顔で標は言った。
「僕が死ぬまで、僕のやりたい事に付き合ってよ」
――それから一月後。
二人は『彼女』と出会った。