黒い翼と出合いと別れ 19
掟は病院の廊下を歩いていた。
下校中、いきなり標の携帯から電話が掛かってきたかと思うと、琉哉から標が病院に運び込まれたと聞かされたのだ。
「標の奴、何であの女の所にいたんだ……?」
呟きつつ、掟は標の病室へ向かう。
通路の角を曲がり掛けたが、反射的に身体を戻し、壁に背を貼り付けた。
そっと、掟はそこから角の向こうの様子を窺う。
そこには標の病室があるのだが、その扉から意外な組み合わせの男女が出てきたのだ。
一人は連絡を寄越した孝和良琉哉。
そしてもう一人は、標の担当医である原八木匡仁だった。
身を隠す必要は無かったのかもしれないが、掟は何故か微妙な雰囲気を感じ、様子を見る事にした。
「――まさか、標君と知り合いだったとはね」
原八木はそう言って苦笑した。
「……知り合いという程のものではありませんけど」
複雑な表情で琉哉は言った。
二人が知り合いであった事に掟は驚いたが、琉哉の友人が入院していた事を考えるとそんなに不思議は無いと思い直した。
「今日は、お休みだったんですか?」
「いや。どうして?」
「救急車ではなく自家用車で標君を迎えに来たので」
その問いに、原八木は視線を標の病室へと向ける。
「……症状が症状だからね。できるだけ外部に洩らしたくない」
「暁と同じ様に、ですか」
琉哉の声が震えた。
「でも、掟君は標君の症状を知っているみたいですけど」
「過ちは、繰り返したくないからね」
「……暁の事を、過ちだとか、そんな言葉で終わらせないでください」
掟の位置からは、琉哉の表情は見えない。
「あなたが、そんな事を言わないでください。暁は、あなたの事を信頼していたのに」
「孝和良さん」
原八木は何故か眉根を寄せた。
そして、
「標君は、暁ちゃんではないよ」
と言った。




