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黒い翼と出合いと別れ 18

「お姉さんは、忘れられないんだね」


 標は言う。


「その人が死んでどんなに時間が経っても、お姉さんの心の中にその記憶がある限り、ずっとお姉さんは後悔し続ける」


 言ってからふと、ある考えが思い浮かんだ。


「――ねえ、お姉さん。もしも今、僕が『一緒に死んで』って言ったら、どうする?」


 え、と琉哉は戸惑いながら標を見た。


「どうする、って」

「僕とお姉さんは出会ってからそんなに時間が経ってる訳じゃないし、仲が良いとも言えないけどさ」


 でも、と標は言う。


「僕達は、同じ苦しみを抱えてる。僕はお姉さんの友達と同じ、掟はお姉さんと同じ苦しみを」


 死に向かう苦しみ。

 死を看取る苦しみ。


「僕も一人で死ぬのは怖い。誰かに一緒にいて欲しい。でも掟はきっと拒否する。だから、掟と同じ立場のお姉さんに傍にいて欲しい」


 琉哉の隣に移動し、標は彼女の手を取った。一瞬身体を震わせたが、琉哉の視線は標から離れなかった。


「……お姉さんにとっては、贖罪の機会にもなるんじゃないかな」


 標は言って、笑みを浮かべた。


 たまに見せる純粋な笑みとはまた違う、絶望に満ちた暗い笑み。


 その表情に、琉哉はかつての友人を重ねて見てしまった。


「……私で、いいの?」


 震えた声で、琉哉が呟く。


 標が答えようと口を開いたその時。


「――――っ」


「標君?」

 急にうずくまった標に、琉哉は声をかけた。


「……携帯……」


 苦しげに声を出した標の顔は蒼白になっていた。


「今は、まだ……だめ、だから……病院、の……先生……に、連絡、を」


 標が震えながら取り出した携帯電話を受け取り、琉哉はアドレスを確認した。


「……え?」


 目を見開き、琉哉は標に視線を向けた。


 標は目を閉じ、荒い呼吸を繰り返している。

 発作なのだろう。もしかしたら、このままでは標は――。


「…………」


 躊躇ったが、琉哉は決意をして電話を掛けた。

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