黒い翼と出合いと別れ 16
「……あの時話さなかったのは、きっと、聞いたら掟君が怒るだろうと思ったからなんだけど」
服を着替え、琉哉は部屋に標を入れた。
テーブルを挟み、二人は対峙する。
「…………」
一旦は口を開き掛けた琉哉だったが、まだ躊躇いがあるのか、口を閉じた。
標は無言で、琉哉が口を開くのを待った。
「……私の友達は自殺した、って言ったけど」
琉哉は標と視線を合わせないように、テーブルの上を見つめて言った。
「その原因は、私なの」
膝の上に乗せていた手を、爪が食い込むまで握り締める。
「私が、彼女を追い詰めた」
「……どうして、そう言い切れるの?」
静かな声で、標が聞いた。
「電話で言われたの」
琉哉の声が、微かに震える。
「『怖い。死ぬのが怖い。一人で死ぬのが怖い。私だけ死ぬのは嫌。ねえお願い――』」
――一緒に死んでくれる。
――一人は嫌なの。
そう、彼女は言って。
「私は、そんな彼女に『嫌だ』と言ってしまった」
一緒に死ぬ事がではない。
彼女が死のうとしている事を否定したかっただけなのだ。
それなのに、
『そんな簡単に死なないでよ』
と、無責任な言葉を投げ掛けた。
彼女は泣いているのか笑っているのか分からない声音で、
『もう、無理なんだよ』
と告げた。
『私はもう生きていられない。琉哉が嫌だって言うなら、私は一人で死ぬしかない』
違う、そういう意味で言ったんじゃない、と口を開く前に、
『――さよなら』
と言って、彼女は電話を切った。
「慌てて病院に行った時には、もう手遅れで」
――担架で運ばれる、白いシーツで包まれた何か。
――それは所々赤く染まっていて。
琉哉は、自分が、彼女を死なせたのだと理解した。




