黒い翼と出合いと別れ 15
――標と掟に最後に会ってから数日後。
夕方、仕事から帰宅すると、玄関に標が立っていた。
「あ、お帰りなさい」
琉哉に気付き、標は笑顔で言った。
「……掟君は?」
言いつつも、琉哉は警戒を解かない。
殺され掛けた記憶は、そう簡単には消えない。
「掟は補習。帰りが遅くなりそうだったから、お姉さんの所に遊びに来たんだ」
「……」
標の服装は、下はジーンズ、上は青いトレーナーの上に黒いパーカーを羽織っている。
フードがあるので、背中の『翼』はあまり目立たない。
そのあまりにも通学に適さない姿を見て、琉哉は少し悩んだが、
「ねぇ、標君は、学校に行ってるの」
と、疑問を口にした。
「ううん。今は行ってない」
あっさりと標は答えた。
「服を着るから見た目はともかく、さすがに触られると気付かれるから。一応入学式には出たけどね。それからはずっと、掟が学校から帰るまで引きこもり状態」
職質とかされたら困るし、と標は言うが。
「じゃあ、何で私の家の前で待ってたの? 人目に付くでしょ?」
琉哉の疑問にうん、と頷くと。
「お姉さん、まだ隠してる事があるでしょ」
そう標に言われ、琉哉は身体を強張らせた。
「掟がいない時に来た理由は、半分は本当だけど半分は嘘なんだ。僕一人なら、病人が相手なら話して貰えるかと思って」
標は琉哉の目を見て言った。
真剣な、だがしかし微かに不安が混じったような瞳だった。




