黒い翼と出合いと別れ 13
「さて。お腹も一杯になったし本題に入ろうか」
食器の片付けが終了した後で、標が唐突に言った。
「本題……?」
「うん」
流哉の呟きに標は笑顔で頷いたが、その目は笑っていなかった。
「お姉さんが秘密にしている事を、僕は知りたいんだ」
予想通りと言えば予想通りの言葉だった。
「お姉さんは昨日の夜『何も知らない』って言ってたけど、それは嘘だよね」
じっ、と標は流哉を見つめる。
「『黒翼症』と僕が言った時、動揺してた事を考えると、恐らくはお姉さんの知り合いにいたんじゃないかと思うんだけど。……僕と同じ、『黒い翼』が生えた人が」
掟は、標の言葉に流哉の視線が揺れるのを見た。
「……やっぱり、そうなんだ」
標は確信した様に言った。
「その人は、死んだんだね」
「…………」
「お姉さんにとって大切な人だった。だから、昨日の夜――」
「何で」
標の言葉を遮り、流哉は言った。
「何でそんな事を聞きたいの。あなたには関係無いでしょう」
確かにそうだ、と掟は思う。
何故、ここまで標は拘っているのだろうか。
「知りたいんだ」
標は呟いた。
「僕は正直、死ぬのが怖い。『黒翼症』がどういう物なのか分からなくて怖い。同じ症状の人なんて知らないから、どんな死に方をするか分からない、それが怖い。……だから、他の人がどうやって折り合いを付けたのか、知りたいんだ」
掟は標の本音を初めて聞いた。
いつも笑っているが、それは恐怖の裏返しだったのかと、今更気付いた。
「……死ぬ事に折り合いなんて、付けられる筈ないでしょ」
流哉が静かに言った。
「昨日殺され掛けたのに平然としてるあんたに言われたくはないな」
思わず掟は流哉に言った。
「死ぬ事に折り合いを付ける事と生きる事を諦める事はイコールじゃない」
視線を合わせずに流哉は言う。
「それに、私の知り合いは『黒翼症』だったけど、死因は病死じゃない」
病死ではない、という事は。
「……自殺したの。私の、目の前で」
辛そうに、琉哉は絞り出すような声でそう言った。




