黒い翼と出合いと別れ 11
「ちゃんとした冷蔵庫があんだから、パンと牛乳以外にも何か入れとけよ」
テーブルに着いて開口一番に掟が言った。
「何だあれ。冷凍食品びっしりとか。普通何か料理しようとか思わないのか?」
……お前は私の母親か。
という突っ込みを心の中でしつつ、流哉は無言で皿の中の卵をつついた。
トーストにハムエッグにサラダにコーヒー。
普通と言えば普通だが。
家には食パンとインスタントコーヒーはあるが、卵とハムと野菜は常備していなかった筈だ。
「買ってきたの? わざわざ?」
流哉は呆れた様に呟いた。
「ああ。あんなに何も無いとは思わなかったから、わ・ざ・わ・ざ。スーパーまで行って買ってきた」
わざわざ、という部分を強調して掟が言った。
「……何で」
「こいつがあんたと一緒に飯が食いたいとか言うから」
フォークで標を指しながら掟は言う。当の標はにこにこと笑顔でトーストを頬ばっている。
「嫌なら食うな」
掟が流哉の皿に手を伸ばそうとする。
「半分はうちの食材」
す、と流哉は皿を引き寄せた。
「半分以下だ。金取るぞ」
掟が流哉を睨み付ける。
「じゃあ不法侵入の分でこの食事代はチャラって事で」
言って流哉はコーヒーカップを口に付けた。
「くっ……」
掟が悔しそうに口を噤むのを見て、標は軽く笑った。




