表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

1-4


「はい。ということで、放課後です。今日は授業が早く終わって、一般的な学生ならこの時間を有効に使って遊び倒すところですね」


 ジャンは右手の拳を軽く握って口元で構え、マイクを持ったリポーターのように、しかしリポーターとしては落第なのっぺりした平坦な声で言った。


「だよね~。私も今日は街で食い倒れる予定だったんだ」

「私は、時間があるときにゆっくり読もうと思って取っておいた本を読もうと思ってたな」

「何の本?」

「えーっとね、『魔草の取り扱い事典』っていうの。魔草に関する事故事例がたくさん載ってて面白いの!ただ、ちょっと載ってる魔草の種類がちょっと少ないんだけどね」

「あー、あれ?この前薬学の先生から借りてきた、分厚過ぎて片手じゃ持てなくて、しかも全10巻あった」

「うん。その本だよ」

 そのジャンの台詞に答え、しかしそのジャンをそっちのけでリコリスとミューはほのぼのと雑談を交わした。年頃の女学生が仲良くほのぼのしている光景は大変なごむが、今のジャンには逆効果だった。胡乱な眼で2人を見ながら声を絞り出した。


「化け物だ・・・ここに、青春を、そんな開く前に寝てしまいそうな本の読書時間で浪費する化け物が・・・。って!そうじゃねえ!俺が言いたいのは!何で俺が薬草学の授業中爆睡してたお前のとばっちりを受けて飼育棟の罰掃除を手伝わなけりゃならねえんだ!」

 3人が居るのは、学園内の魔法生物飼育棟の一室。本日最後の授業で寝ていたので罰掃除を言いつけられたリコリスに巻き込まれたジャンは、勢いよく一人でノリツッコミしつつ抗議の叫びを上げた。


「んー。・・・頑張れ☆」

「んなウインク付きのぶりっこ的な仕草なんかでごまかせるか!」

 腰の入ったスイングで箒をびしっとリコリスの方に向けながらジャンは叫んだが、当のリコリスはあらこんなところにほこりがとか呟きつつ明後日の方向に体ごと向いている。ミューは、そんなジャンを慰めようと口を開いた。


「でも、授業用以外の魔法生物も見れるから、お得だと思うんだけど・・・」

 その言葉自体は正しく、掃除を言いつけられた部屋は複数あったが、その中には授業ではお目にかかる事がない魔法生物も飼育されており、今3人が居る部屋は体の一部が魔術の触媒になるような生物が多く居た。しかし、ジャンはそんな実技以外に興味を持つような真面目な学生でも、モンスターマニアでもない。


「そんな真面目な奴はミルディぐらいしかいないって。授業なんて、魔術の実技ぐらいしかやる気でねえよ・・・」

 箒に体重を預けてぐってりしてるジャンに向かって、今度はリコリスが口を開いた。

「そう?私、歴史とか聞いてて面白いんだけど」

「どこがだよ・・・」

「だって、自分が今まで聞いた話と違ってるのが面白いから」

「今まで聞いた話?」

「うん。まあ、私の『家』はいろんなモノが集まってたから」

 

「そろそろ真面目にしないと、暗くなるまでに帰れないよ」

 すっかり雑談に気をとられ、最初に我に返って、3人とも手が止まっていることに気付いたのはミューだった。

「じゃ、そろそろ頑張ろうか!」

「くっそー。早く終わらせて、絶対に買い出しに行ってやる・・・」

「あははー。どうせ碌なモノじゃないのにねー、ミュー」

「だ・か・ら!お前が言うなよ!!!」


 そして各々それぞれのテンションで、ようやく作業に取り掛かり始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ