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プロローグ
・・・気付いた時には、何もかもが手遅れだった。
その場に立っているのは、ちいさくてまっかな影、だけだった。ソレはひたすらあかかった。
その髪も、瞳も、腕も、胸も・・・足元も。紅く、赫く、緋い、モノだった。
ソレは、ふと、手元を見た。その時ソレはようやく自身の腕があかいことに気が付いた。そして次に、足元に視線を落とすと、人形が落ちている事に気が付いた。素人の手作りなのだろう、少々不細工なその人形は、大切に扱われていたらしく、手垢でずいぶん黄ばんではいたが、小奇麗だった。
じわじわと「あか」に侵されていることを除けば。
そして、ソレは笑った。空を仰いで、大きな笑い声を上げながら。大きく大きく、高く高く、空に響かせるように。ソレと同じようにあかい、腐り落ちる果実のように暮れてゆく陽に届くように。心底おかしそうにわらった。ワラッタ。笑った。嗤った。哂った。
その「モノ」を知るものは、ソレ自身と、ソレを見ていた2人の子供と、一人の奇妙なおとこと、一匹の獣だった。
・・・そして、子供は誓いを立てた。