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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
背中の温もりを忘れない

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第2話 侍女エルナ――静かに動き出す“切れ者”

セシリアが眠りについた夜。

王城の廊下は静まり返り、蝋燭の炎だけが揺れていた。

エルナ・フェルディナンドは、主の寝顔を確認すると、そっと部屋を後にした。


(……あの少年。ラースと名乗ったわね)


エルナの瞳には、昼間とは違う鋭い光が宿っていた。



エルナは王城の侍女の中でも異質な存在だ。

元は地方の小貴族の娘

幼い頃から礼儀作法だけでなく、剣術・護身術も叩き込まれ

王城の侍女試験では“歴代最高評価”

情報収集と分析能力に長け、王城の文官たちからも「切れ者」と呼ばれる

セシリアの誕生と同時に専属侍女に任命

主を守るためなら、どんな危険も厭わない

そんなエルナが、今日初めて“個人的な興味”を抱いた。


(……あの少年、ただ者ではない)



エルナは王城の一室、侍女たちの控え室に入り、机に向かった。

机の上には、王都の住民登録や孤児院の記録、冒険者ギルドの公開情報が並ぶ。

エルナは手際よく書類をめくり、必要な情報を抜き出していく。


(名前はラース。王都の孤児院で育った……)


ページをめくるたびに、エルナの眉がわずかに動く。


(十二歳で冒険者登録? しかも特例……院長の推薦状付き)


エルナは書類を閉じ、静かに息を吐いた。


「……出自はともかく、有望な少年ね」



エルナは椅子に背を預け、今日の出来事を思い返した。

(あの時、私に向けた礼儀正しい挨拶。

 落ち着いた目。 あれは……十五歳の少年のものではなかった)


(姫様を背負って走った時の安定感も…… 鍛え方が違う)


エルナは結論を出した。


「……危険な少年ではない。

 むしろ――」


蝋燭の炎が揺れ、エルナの横顔を照らす。


「――姫様の未来に関わる“可能性”を持っている」



エルナは書類を丁寧にまとめ、机の引き出しにしまった。


(今はまだ、姫様に伝える必要はないわ。

 ただ――)


窓の外には、王都の夜景が広がっていた。


「……覚えておくべき名前ね。

 ラースという少年は」

エルナは静かに立ち上がり、セシリアの部屋へ戻っていった。

その足取りは、侍女としての忠誠と、

一人の女性としての直感が混ざり合った、迷いのないものだった。

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