第3話 同行の日々――“聖女”として成長するシャーリーと、忍び寄る影
皇国各地を巡る旅は、想像以上に過酷で、そして温かかった。
ラースはシャーリー一行と共に、魔物討伐、護衛、治療活動など、
皇国の民を救う任務に同行していた。
シャーリーは回復魔法の才能を開花させ、
レオンとミリアは前衛として頼もしく、ガルドは豪快で、仲間思いだった。
(……この時間が、ずっと続けばいいのに)
ラースはそう思う瞬間が何度もあった。
だが同時に、胸の奥には常に冷たい影があった。
――仮面の者は、必ず動く。
シャーリーは人々に癒しを与え、その優しさと魔力の高さから、
“次代の聖女”としての名声を確実に高めていった。
村の老人が涙を流して言った。
「ありがとう……シャーリー様……
あなたは本当に、神の祝福を受けておられる……」
シャーリーは微笑み、
「そんな……私はまだまだです」と謙遜する。
その姿を見て、ラースは胸が温かくなると同時に、強い危機感を覚えた。
(……この子が、前のループでは“成り代わられた”)
その未来を絶対に繰り返させない。そのためにここにいる。
旅を続けるうちに、ラースはレオンたちとも自然に打ち解けていった。
レオンは真面目で、仲間思い
ミリアは明るく、シャーリーの姉のような存在
ガルドは豪快で、誰よりも仲間を大切にする
ガルドは特にラースを気に入り、焚き火の夜には肩を組んで笑った。
「お前、強いし優しいし……
お嬢もお前に懐いてるしよ!これからも頼むぜ!」
ラースは笑いながらも、胸の奥に痛みを感じていた。
(……ガルド。前のループでは、シャーリーを庇って死んだ男)
この未来では絶対に死なせない。そう誓っていた。
ラースは旅の合間に、仮面の者の痕跡を探し続けた。
不自然な失踪者
顔を隠した者
行方不明の聖職者
不自然な魔物の動き
だが、決定的な証拠は何も見つからない。
(……まだ動いていないのか?それとも、もっと深いところに潜んでいるのか?)
焦りが胸を締めつける。
季節が巡り、皇国の空気が再び冷たくなり始めた頃。
シャーリーは以前よりも落ち着き、
聖女としての威厳すら漂わせるようになっていた。
レオンたちも成長し、一行は皇国でも有名な
“聖女隊”として知られるようになっていた。
だが――その平穏は長く続かなかった。
ある夜、宿の一室でシャーリーが深刻な表情でラースを呼んだ。
「ラースさん……相談があります」
ラースはすぐに察した。
(……来たか)
シャーリーは震える声で言った。
「教皇から……あの侍従と同じ“違和感”を感じるようになりました」
ラースの心臓が強く脈打つ。
「……成り代わられた、ということか」
シャーリーは静かに頷いた。
「はい。……もう、あの方は“本物”ではありません」
部屋の空気が一気に冷えた。
(ついに……始まった)
ラースは深く息を吸い、次に何をすべきかを考え始めた。




