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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
未来へ繋ぐ告白と、予期せぬ死

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第5話 未来へ繋ぐ準備。しかし黒騎士は姿を見せず、ラースは再び死ぬ

セシリア姫との密談から数日後。南方戦線は激しさを増し、

ついに――ラースが語った未来が現実になり始めた。



「報告! 西の国境が……突破されました!」


伝令の声が天幕に響く。

セシリア姫は地図を見つめ、静かに息を吸った。


「……本当に、あなたの言った通りになってしまいましたわね」


ラースは頷いた。


「ここから先は、前回と同じ流れになります。

 神聖皇国軍を押し返し、その隙に帝国軍の背後を討つ……」


セシリア姫はラースを見つめ、真剣な声音で言った。


「ラース。カインは連れて行ってはなりませんわ。

 そして……あなたも、前線に出すぎてはなりません」

「……承知しました」


セシリア姫はそっと手を差し出し、掌に魔力の珠を作り出した。


「これは……わたくしの想いを込めた魔力です。

 どうか……ご無事で戻ってきてくださいませ」


ラースはその珠を受け取り、胸にしまった。


「必ず……戻ります」



数日後。ラース率いる一軍は、神聖皇国軍を押し返し、

その勢いのまま帝国軍の背後へ向かった。

馬を走らせること数日。

王都ランスまであと半日という地点で、ラースは一旦休憩を命じた。


「明日の朝一で出る。焦る必要はない……今回は、無理をしない」


セシリア姫との約束が胸に残っていた。



昼過ぎ。王都ランスの西側から、帝国軍が攻撃を仕掛けているのが見えた。

ラースは剣を掲げた。


「――突撃!!」


ラース軍が帝国軍の背後から襲いかかる。

奇襲は成功し、帝国軍の一角が崩れた。


「弓隊、斉射!魔導士隊、火球を!」


大火球が炸裂し、帝国軍の陣形が大きく乱れる。

王都側の部隊も押し返し始め、戦況は王国軍優勢だった。

だが――ラースは胸の奥に“違和感”を覚えていた。


「……黒騎士が……いない?」


前回も前々回も、この戦場には必ず黒騎士がいた。

だが今回は、どこを見ても黒い鎧の巨躯は見当たらない。


「……どういうことだ……?」



帝国軍は徐々に撤退を始め、王都側の部隊とラース軍は合流を果たした。


「将軍! 帝国軍、退き始めています!」

「このまま押し切れます!」


兵たちの声が上がる。

ラースも、ほんの少しだけ胸を撫で下ろした。


――黒騎士がいないなら、

――今回は……勝てるのか?


その瞬間だった。


「ラース将軍!!」


誰かの叫び声が聞こえた。

ラースが振り返るより早く


――胸の奥に、冷たい衝撃が走った。


「……え……?」


視線を落とすと、自分の胸から剣が生えていた。

理解が追いつかない。

黒騎士はいない。背後に気配もなかった。誰も近づいていないはずだ。


「ぐ……ぼっ……」


口から血が溢れ、ラースは膝をついた。

視界が揺れる。地面が遠ざかる。


――どうして……?

――黒騎士は……いなかったのに……?

――誰が……?


倒れ込むラースの耳に、兵たちの叫び声が遠く響いた。


「将軍!!」

「誰だ! 誰がやった!?」

「敵影は!? どこに……!」


ラースの意識は、その混乱の中でゆっくりと沈んでいった。

最後に浮かんだのは、セシリア姫の顔だった。


――戻らなきゃ……

――まだ……伝えたいことが……


闇が、ラースを飲み込んだ。

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