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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第6章 地球の終末

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3話 劫火

人々は、思い出したように、これはあの魔女のせいだと言い出した。

私が、人間を滅ぼそうとしているんだって。そんなわけないでしょう。

私が外を歩くと、周りには誰もいなくなる。

そして、どこからか石とかが投げられてくる。


「今、石を投げたのは誰?」


振り返ると、誰もいない。

私のことはみんな嫌いだけど、誰もが私に怯えていた。


そんな中、外を歩いていたら、急に人が駆け寄ってきて、私のお腹を刺す。

目の前には1人の老婆がいた。

老婆は、私のお腹に何度も包丁を刺してきた。


「地球が滅びるのは、おまえのせい。苦しみなさい。」

「痛いじゃないの、ババー。平民は私にひれ伏していればいいのよ。」


私は、これまで抑えてきたことを叫んでいた。

もう、自分を人前で飾るのは限界だった。

先の戦争、今地球に起きていること、全て私のせいじゃない。

家族も、みんなに殺された。

私も被害者なの。


こんな扱いを受けるのなら、人類は絶滅しておいた方がよかったかもしれない。

中途半端に誰とでも仲良くいたいなんて考えていたのが間違いだった。

どちらにも着かずにいた自分を責める。


もっと、冷徹に、人類を敵とみなし、全滅していれば家族は無事だったかもしれない。

私は、どこで道を誤ってしまったのかしら。

家族を殺し、私も亡き者にしようとする人類と闘いたくないと思っていたのがバカだった。


今更だけど、目の前にいる人々への憎しみが心の中で爆発する。

私は、老婆を睨みつけていた。こんな奴らを許しておけない。


お腹から包丁を抜き、痛みを我慢しながら、老婆を道路に押さえつけた。

そして、無意識のうちに、その老婆を包丁で何回も刺していた。

血しぶきがあがり、私の顔は血で真っ赤に染まっていたの。憎しみの顔に。


「この女は魔女だ。」


この映像はまたたくまに世界中で広がった。

すっかり超能力者という言葉が消えていたのに、再び呼び名を思い出させてしまった。

月の軌道を変えたのも超能力者だったと。


月にミサイルを打った超能力者のドクロがTVに映る。

ドクロはハンマーで粉々にされ、大勢の歓声が響き渡る映像が全世界に流れる。

でも、こんなことをしても月の軌道は変わらないのはわかっているでしょう。


「私はなにも悪くないのに・・・。」


そう叫んだ時だった。

老婆を殺して呆然としていた私の腕を男性が後ろで縛り上げる。

それを見た人々も集まり、私を押さえつけた。


暴徒は私を道路で引きずり、柱に手足を縛りつける。

横を見ると、私のような女性が20人ぐらい柱に縛り付けられている。


「私は魔女じゃない。助けて。」

「魔女はみんなそう嘘をつくんだよ。お前達が地球を壊して、俺達を殺そうとしてるんだろう。もうやめて、俺達を助けてくれ。」

「そんなことしていない。間違いなのよ。」


私以外の女性達は、悲鳴をあげ、助けを求めていたけど、誰も聞いていなかった。

20歳ぐらいの女性ばかり。

私のように死ねない女性は、まだいたようね。


その時、私に大きな杭を何回も打ち付けた。

痛い。痛い。傷は治るけど、痛みは感じるのよ。やめて。


横を見ると、柱に縛られた女性達にもみんな杭が打たれている。

ただ、どの女性達も血を吐いて死んでいった。


「あなた達、こんなひどいことをして何も思わないの。横の女性達、みんな死んだじゃないの。私と同じ魔女じゃなかったのよ。あなた達こそが鬼じゃないの。」


でも、もう暴徒を抑えることはできなかった。

私の服は血だらけになり、それから2週間、野ざらしにされた。


そして、大勢がそこに集まり、私を捧げるから災害から守ってくれとお祈りを始めた。

何千人という人が、私を中心にひれ伏し、お祈りを捧げている。

そんなことしても、月の軌道は変わらないということがわからないの。


そのうち、私を焼き始める人もでてきた。

裸の女性を杭に打ち付け、下から焼き付ける。

それを囲み、何千人という人がお祈りを捧げる。

こんな異様な風景が2週間も続いた。


ふと、空を見上げると、空の半分にもなる月が落ちてくる。

私の周りにいた人々はもう誰もいない。風に飛ばされ、水に流され、死に絶えたみたい。

私を押さえつけていた柱も炭となり、私を縛るものはもう何もなかった。

私は、わずかに残ったコンクリートの壁を背に、足を手でかかえ小さく丸まっていた。


月の引力のせいかしら、暴風雨は更に威力を増し、西の方に月は衝突した。

そして、その衝撃は地球全体に及び、地球は火につつまれる。

そして、わずかに生き残っていた人類も死に絶えた。

人類、そして地球の最後・・・。


私は、服が焼かれ、傷1つない美しい裸体として、今も宇宙をさまよい続けている。

息はできず、なにもかもが凍り付く世界。

苦痛に耐えながら私の時間は終わらない・・・。


よく明けない夜はないと聞くけど、それは地球にいるから。

私には終わりというものがない。

今は、ずっと夜は明けないし、先にある太陽は徐々に近づいてきている。


私の不幸は、あの一本の注射から始まった。

この苦痛はいつまで続くのかしら。

目の前には、大きな太陽が炎を揺らして近づいてくる。


それから数百年後、私はまだ太陽のコロナの中にいた。

私は、劫火に焼かれ、死ぬこともできずに地獄を超える苦しみを永遠に感じていた。

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