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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第6章 地球の終末

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1話 露見

爆風で瓦礫だらけになり、炎に包まれる伊東の街を凛はただ1人で歩いていた。

こんな経験は昔も故郷であった。

私は、周りに不幸を呼ぶ女性なのかしら。


今回も多くの人を巻き込んでしまった。

共に戦い、笑いに溢れた時間を一緒に過ごした人々はもういない。

ただ、みんなを幸せにしたかっただけなのに。


超能力者ではない人を殺したかったわけでもない。

家族が人質になっているから、どうしょうもなかったの。

私は、ただ、みんなと仲良く、笑いながら穏やかに過ごしたいだけ。


どうして、こんなに些細な幸せを手にいれられないのかしら。

私は、黒焦げになった死体が転がる道を、体に炎を浴びながら進む。

横にある建物の窓からは火が吹き出し、2階は崩れ落ちる。


でも、今井は、こんな伊東で、私が生き残っているなんて夢にも思っていないと思う。

私の能力は味方でも河田しか知らせていなかったから。


対策本部は瓦礫の山となり、多くの死体が地面に散らばっている。

その中に、河田の死体もあるのだと思う。

この様子だと、佐々木さん、結愛も殺されているのだろう。


飛び散る火が体に降り注ぎ、体を焼き付ける。

火が肺にはいり、息もできずに苦しい。

でも、皮膚等はすぐに元に戻り、痛さに耐えながら私は前に進んでいった。


しばらく歩くと、ミサイルの影響が収まってくる。

私達が支配していた人々は、炎が燃え盛る対策本部の方をみて呆然と立ちすくむ。

これまで何をしていたのだろうかと、ただただ炎を見つめていた。


私は、もう、彼らを支配しようとは思わないし、その気力もなくなっていた。

彼らも、私をみて誰だか分かる人もいなかった。

私は、ゆっくりと、しかし確実に燃え盛る伊東から出ていく。


海沿いを北に歩き、マリンタウンに来た時、プロペラの音が上空から聞こえてくる。

敵がまた迫ってきたのかしら。私を殺すのは無理なのに。

見上げると、米軍のオスプレイが近づいてくる。


プロペラの部分を縦にし、ものすごい砂埃を巻き上げながら地面に着陸する。

その砂埃にすぐには近寄れなかった。

パイロットは、周りに誰もいないことを確認し、扉を開いた。


目の前に降り立ったオスプレイのパイロットは超能力者だと分かる。

パイロットは、乗れと手振りをした。

私がオスプレイに乗るとパイロットは話し始める。


「凛さんですね。アメリカの超能力者組織から来ました。ジョンといいます。」

「ジョン、アメリカの組織の一員なのね。日本では、もう私しか超能力者はいなくなったと思う。まだ2人の消息は不明だけど、敵が、ここまで用意周到であれば、その2人も殺害されているはず。完敗だった。」

「アメリカでも、生き残っている超能力者は私だけです。超能力者が多くの都市を破壊したことが、普通の人の敵意を増幅してしまったようです。超能力者は自分達を敵視していると考えた普通の人は既存の軍隊を動かしました。1か国で500人にも満たない超能力者にはそれに対抗するのに準備が足りず、残念ですが、最初は、優勢だった私達も、普通の人の数に圧倒されほとんど殲滅されたのです。」


日本で闘いに明け暮れていた私は、世界の状況について知らなかった。

アメリカでさえ、たった1人しか超能力者が残っていないという情報に衝撃を受ける。


「全世界で超能力者は、もう5人もいないと思います。ところで、凛さんには朗報があります。」

「こんな状況で、朗報なんてあるのかしら。」

「まだアメリカの超能力者組織があったとき、コルト国から凛さんのご家族を取り戻してアメリカに退避させていました。そのうち、コルト国の超能力者が全て排除され、ご家族を危険にさらす人はいなくなったので、今は、ギスタン国の元のご自宅に戻っています。凛さんはどうされますか?」

「え、家族が解放されたの。もし、可能ならギスタンに戻って、家族と平穏に過ごしたい。私は、人と争うことは嫌いなの。誰とも仲良く、平穏に過ごしたい。許してもらえるかしら。」

「もう、無理しなくていいのです。超能力者は排除され、もう脅威とは思われていません。

私も、周りから攻撃を受けないように政府に保護してもらえるように要請するつもりです。特に、凛さんは、ギスタンでは超能力者だと思われていないですし、家族と普通の人として暮らせるはずです。」


私は、横須賀の米軍基地からギスタンに運ばれ、家族との再会を果たす。

パイロットは人を操る超能力を持ち、米軍を操り、私を運ぶ。

家族は拘束され、心身とも疲弊していたけど、出会うと、笑顔で私に駆け寄る。


ギスタンは、荒れ果てたままだけど、ここで暮らす人はそれなりに増えていた。

かつての美しい都市を再建しようと活気づいていた。


「美味しいパンが焼けたわよ。昨日作ったジャムでいただきましょう。」


家族はテーブルに座り、再び迎えた平穏な時間を楽しんでいる。

雪をかぶった山々をのぞみ、穏やかな秋の朝、一家団欒の時間を過ごす。

最近は、家の前の道路も整備され、昔より小さいながら一軒家で暮らしていた。


穏やかに私を見つめる父。なんでも相談にのってくれる母。

公園に行って、一緒にバトミントンをする妹。

日本で戦闘を繰り返していた私には、想像もできなかった幸せな時間だった。


黄色に色づく木の葉から漏れる日差しを浴び、家族の笑い声が響く。

やっと、昔どおりの幸せな日々が戻ってきたと、苦難の日々を経たからこそ味わえた。

この幸せな時間がずっと続くものだと信じ、穏やかな時間を楽しんでいたい。


でも、最近、外で歩いているときに誰かの視線を感じていた。

ただ、視線の方に目をやっても、誰もいない。

気のせいなのかしら。


買い物で大通りを歩いている時、突然、大勢の各国報道陣に囲まれた。


「凛さん、お聞かせください。あなたは、我々を滅ぼそうとした超能力者の生き残りだというのは本当なんですか?」

「なんのことですか?」

「New York News の記事はご存じないのですか?」

「知らないけど?」

「あなたが超能力者の最後の生き残りだっていうことですよ。我々の最大の敵で、駆逐しなければならない存在だと。」


なんで、私の秘密を知ってるの?

報道陣が放つフラッシュライトの光が眩しくて前を見ることができない。

どうも、私が超能力者だということがバレたみたいだった。


テレビをつけると、そこでも私のことが話されていて、驚くべきことを言っていた。

最近、いつも後ろから気配を感じていたのは、勘違いじゃなかったのね。

記者が、私の背後をつけ、調べていたんだと思う。


私のことだけだったらいい、家族の顔まで全て晒されていた。

この家族は死なないと決めつけている。


どこから、私のことが漏れたのかしら。

ニュースでは、コルト国から研究データが見つかり、私の映像があったらしい。

私の胸に剣が突き刺されたものの、傷が瞬く間に治り、立ち上がる映像が公開された。

ニュースキャスターの女性は悲鳴をあげている。


私の家には、ペンキで超能力者は死ね、出ていけとペンキで書かれる。

私が望んでしたことじゃないのに、どうして、こんなひどい仕打ちを受けるの。

私達は、泣きながら、壁のペンキを消した。


この日の翌日、妹が体を複数切りつけられ、死体として戻ってきた。

どうせ、死なないんだろうと大勢のクラスメイトが刺したという。

両親は、お前のせいだと泣き崩れる。


私は、自分から望んでこの体になったわけじゃない。

しかも、家族は全く関係がない。

私が何をしたというの。どうして、理不尽な仕打ちを受けなければいけないの?


テレビでは、妹のことは全く報道されず、私が魔女だという報道が続く。

道を歩いていても私への視線は険しくなった。

私は、ただ、平穏な日々を暮らしたいだけなのに。


テレビ番組に呼ばれたこともある。そこで、私は、普通の女性だと叫んだ。

そして、周りの人が妹を刺し殺したことをいい、そういう人こそが悪魔だと言った。

そんな時、誰か知らない人が急に出てきて、私のことをナイフで刺す。


苦しむ私を見て、間違いだった、刺した人は殺人をしたんだと誰もが思った。

でも、私の傷はすぐに消えていき、魔女だと、誰もが悲鳴をあげる。逆効果だった。


私は、魔女だ、魔女だと汚らわしいものと見る目が怖くなっていく。

みんなが、化け物なんて死んでしまえと言っている。

でも、死にたいけど、死ねないの。


ある日、家の前で、多くの人が集まり、怒号を発していた。


「俺達を抹殺しようとした超能力者はこの地球から出ていけ。」


この掛け声を受け、怒号がうねりに変わっていく。


「私は、なにも悪くない。私は、コルト国の実験で、こんな体になっただけ。私から望んだことじゃない。また、あなた達が、私達超能力者を抹殺しようとしたから抵抗しただけ。もととも、あなた達から仕掛けたことじゃない。」

「俺達を殺そうとしていたのに、何を正当化しているんだ。魔女が。」

「全て本当のこと。殺そうとする人の前でも、黙っていなければいけないの? 私のせいじゃないのよ。」

「騙されるな。あんな健気な顔をしていながら、心のなかでは俺達をどう殺そうかと楽しみにしてるんだ。」

「魔女は殺せ、魔女は殺せ。」


否定する私の声は、怒号の前にかき消された。

もう、この暴徒を抑えることはできない。

みんな、目の色が変わり、冷静さを失っている。


そして、誰かが、私の家にガソリンをまき、火をつけた。

火はあっという間に私の家中を囲み、人々はその火を見守っていた。

これで、魔女とその家族はいなくなり、もとの生活に戻れると笑顔があふれた。


でも、焼き尽くされた残骸から平然と歩いて出てきた私を見て、誰もが恐怖に凍りついた。

それを見たときには、周りの人々の顔から笑顔は消え、悲鳴も聞こえた。

やっぱり、あの女は魔女だったんだと。人々は、恐れ、逃げ出した。


いっきに火が広がり、家族を逃すことができなかった。

いえ、家族は、外に出れば殺されると怯え、動くことができなかった。

じっとしている家族に煙が襲い、床に倒れていった。


私は、死なない。でも、周りの人を攻撃する能力はない。

家族を目の前で奪われながら、この怒りを攻撃に変えることができない。

自分の置かれた境遇を恨むことしかできなかった。

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