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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第5章 最終決戦

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5話 攻撃

「結愛から、8月10日に敵の全勢力が韮崎に集まると連絡があった。こちらにミサイルがないから陸路で攻めるという嘘の情報にこんなに見事に騙されるとは思わなかったけど、それだけ、こちらの演技が上手かったということね。河田さん、では取り掛かりましょう。」

「はい。」


俺は、前回、負けたことで、今回も実は自信を持てなかった。

先の戦争で、大勢の敵兵が俺を殺そうと目が血走り、走り寄る悪夢で毎晩、寝れない。

味方も、今度は大丈夫かと疑うような目を俺に向ける。


それを打ち消すために、人前では平然を装っている。

しかし、いつも心臓が強いこぶしに握られ、潰されそうで立っているのも辛い。

二度と負けられないという精神的負担は重くのしかかっていた。


戦争の勝ち負けは運でしかないと自分に言い聞かせる。

勝率を高めるために情報を徹底的に収集するが、最後は勝利の神様に認められた方が勝つ。

今回は、こちらが圧倒的な情報を持っている。


俺が前回負けたのは特攻隊の作戦のせいだが、それは今井が偶然に思いついたもの。

勝敗は、誤差のようなことでどちらにでもなる。

今回は、俺が勝ち、今井に土下座をさせるんだ。


俺の方が何倍も優秀で、自分が愚かだったと気づいたと、ひざまずかせてやる。

そのためにも、どこかで割り切り、大胆な判断をしなければならない。

今、最悪なのが不安に惑わされ、決断ができないことだ。


今井は、必ず8月10日に兵士を韮崎に結集させる。

そこを一気に叩きのめし、今井を滅ぼすのだ。

一旦、決断をしたその日から安眠をとることができた。


8月10日の朝を迎える。空には雲一つない輝かしい天気。

攻撃は、韮崎の決起集会開かれる12時としていた。


俺は、山の麓にあるオーシャーンビューマンションの1室でゆっくりと朝食を取る。

俺のランクに相応しい300㎡の広さがある最上階の部屋。

窓からは俺専用のテラスが広がり、プールもある。

言い換えると、このマンションの最上階は全て俺のためにある。


ここから見る海はとても気に入っている。

特に朝日が昇る光景は、俺の輝かしい将来を象徴している。

もともと、俺はこんな待遇が相応しく、これまでのみずぼらしい生活は仮の姿だった。


朝食は、専用のシェフが作る。今朝は、ベーコンエッグとクロワッサン。

日本を支配するリーダーに相応しい優雅さを持って、貴族のようにいただく。

今日の勝利をいち早く祝福しようと。


お昼、車で10分の所にある作戦会議室に凛と2人でいた。


「佐々木さんと結愛は、今朝、韮崎を発って、こちらに向かっていると連絡が入ったわ。朝の連絡だったから、お昼までにはこちらのミサイルの攻撃の被害圏域からは脱出できる。お昼のミサイル攻撃は準備万端ということでいいわね。」

「もちろんですよ。誰が指揮をしていると思っているんですか。」

「そうだったわね。頼りにしている河田さんだものね。」


凛は俺に微笑みかける。

やっと、俺の時代が来たんだ。

俺は、目の前の時計を見ながら、攻撃の秒読みをする。


ゼロと言ったのと同時に、海岸沿いにある汐吹公園から轟音が鳴り響いた。

東側の窓から見える、2機のミサイルが発射された姿は雄大そのものだった。

ミサイルは炎を放ち、あっという間に上空に消えていく。


俺と凛は、作戦本部から庭に出て、俺達の勝利を確信した。

その時だった。空に飛行機が近づいてくる。

それが戦闘機だと気づいたときには、もう遅かった。


戦闘機は、小型ミサイルをこの作戦本部に打ち放つ。

俺達には、もう迎撃するミサイルは残っていなかった。

俺達は騙されていたのか? いつだ?


そんなことを考える間もなく、俺は爆風に吹き飛ばされる。

吹き飛ばされるときに、周りが炎に包まれ、体が焼ける姿が目に入った。

体中が焼け、肉も灰となり、崩れ落ちていく。


ほんの1秒にも満たない間に、多くの兵士の頂点に立っていた自分を思い返していた。

俺は、日本を一瞬でも支配した英雄だ。

優秀で、知略に富み、大勢の頂点に立った。


そんな俺が、こんな最後になるのはおかしい。

どこで間違ってしまったのか。

河田の思考はそこで途絶え、体は跡形もなく、灰になっていった。


その時、今井は、攻撃は成功し、凛と河田を殺害したとの連絡を受ける。

今井は、椅子から立ち上がり、窓から差し込む陽の光を見つめる。

これまでの作戦を振り返っていた。


まず、最初に取り掛かったのは、伊東の情報をリアルに収集すること。

そのために、公安メンバーに伊東へ潜入させ、いたる所に盗聴器を仕掛けた。

公安メンバーは公安部長殺害にプライドが傷つき、死にもの狂いで取り組む。


私の想定以上に、公安は優秀で、気づかれることは一切なく、無数の盗聴器を設置した。

凛や河田は、超能力を過信していたのかもしれない。

こんなローテクな方法で、これだけの情報が漏れることは想像もしなかったのだと思う。


超能力者は、日本には、もう4人しか残っていないことが確認された。

そのうち2名が韮崎に情報収集のために派遣されることも分かった。

だから、この2名に嘘の情報を流し、凛をかく乱させることにする。


まずは、敵の軍事力を削ぐこと。一番の問題はミサイルだった。

ミサイルで攻撃されれば、味方の兵士は大打撃を受ける。

しかも、こちらは韮崎にいることはすでに把握されているだろう。


まずは、残っている2機のミサイルを使わせることを考えた。

そのためには、一箇所に全ての兵士が集結するとなれば、そこを狙うに違いない。

そして、そのミサイルが飛んでくる所に、私達の兵士は一人もいないようにする。


2名の超能力者には、特定の日に、こちらの兵士が一か所に集結すると伝える。

潜入している超能力者は透明人間になれる能力を持っていると盗聴で分かっていた。

そこで、対策本部には人感センサーを設置し、本部への潜入を把握する。

また、わざと裏口のドアのカギはかけず、ドアの開閉を検出する装置もつけた。


その中でも、予想外のことが起きた。

ある日の定例会議で、軍部の大将が時間になっても現れず、連絡が取れない。

その大将の家の映像を確認すると、恐ろしい映像が残されていた。


前夜、寝ている大将に佐々木という超能力者が忍び寄る。

そして、大将に触った途端、大将は液体を膜で覆った球体になり、膜がはじけて消える。

席上からは悲鳴の声が響いた。


私たちは、公安部長を殺害した超能力者の顔まで把握できていなかった。

でも、液体が床に広がり、人が消えるという現象からみて、これは同一人部の犯行。

佐々木が公安部長を殺したのだと思う。


佐々木を野放しにしておくわけにはいかないと誰もが思った。

しかし、佐々木を殺せば、敵に警戒させ、これまでの計画がふいになってしまう。

そこで、幹部は、当面の間、対策本部の地下に隠れることにする。

更に、計画を早めることにした。


そして、兵を集める予定日の朝、まず、潜入した超能力者2人を殺害した。

佐々木に触れられないように、油断させ、家を出てすぐに遠くからライフルで射殺する。


打たれた佐々木を見て、柏木はすぐに透明になり消える。

でも、体温は消せない。サーモグラフィー付きのライフル銃で柏木を撃つ。

次第に柏木の体が現れ、地面は血で染まっていく。


柏木は仰向けになったアスファルトの上で、高田さんの最後の言葉を思い出していた。


「サーモって、こういうことだったのね。今更分かっても遅かった。高田さん、今からそっちに行くね。」


柏木が空に上げた腕が道路に落ち、指から力が抜けていく。

これで、超能力者は、あと凛と河田だけ。

あと一歩で絶滅できる。


その後、韮崎にいる全兵士と軍備を速やかに小淵沢に移動させる。

ミサイルが到着する頃は、韮崎に私達の兵士は誰もいない。

小淵沢は周囲が山に囲まれ、伊東からのミサイルの攻撃の被害は最小限にできるはず。


お昼、敵がミサイルを発射し、軍備を使い果たしたことを確認する。

そのうえで、小淵沢から敵が残した戦闘機で飛び立つ。

マッハ3で飛べるので、伊東までは2分ぐらいで到着する計算になる。


そこで、凛と河田がいる作戦本部を狙えば、日本にいる超能力者を全て抹殺できる。

その周辺にいる人間は死ぬことになるけど、被害者は最小限に抑えることができる。

凛がどんな能力を持っているのかは判明しなかったことだけは心残り。

でも、ミサイルで攻撃され、死ぬに違いない。


爆弾投下をする戦闘機に乘った兵士の目は、正面に焦点を定め、覚悟の程を表していた。

そして、敵がミサイルを発射したことを確認して、小淵沢から出立する。

3分後には、計画通り伊東にミサイルで対策本部を攻撃した。


戦闘機は、ゆっくりと上空を旋回する。

そこから見る凛の対策本部は、一瞬にして炎に包まれている。

そこに人が生き残ることができそうには見えない。


火傷に苦しみを訴える顔、銃弾が胸を貫き悲痛な顔、多くの悲劇がそこにあった。

戦闘機に乗る兵士は、心を鬼にして、炎から逃げ惑う人々にも銃弾を放つ。

前の戦争で亡くなった妻、娘、そして同僚の顔を思い出しながら。

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