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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第5章 最終決戦

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3話 戦闘開始

「河田さん、すべての軍隊が整列しました。」


超能力者側の軍隊は韮崎に集結し、目の前に整列している。

全ての作戦は俺に一任されていた。

大量の戦車と、多くの兵士が整列する姿は荘厳だった。


紫陽花が甲府に向けた道々に咲き、俺の勝利を約束してくれている。

梅雨明けの陽の光が軍隊に降り注ぎ、軍隊は一糸乱れずに動く。

精悍な顔つきの兵士達が俺に敬礼をしている。


俺は、これまで感じたことがない支配者としての力を実感していた。

これまで、誰からも尊敬されることがなかったコンプレックスを思い返す。

日本一の大学で医学部を卒業しながらも、小さな研究所の所員として注目もされなかった。


試験管と格闘する地味な日々が過ぎ、気付くと平凡な40歳のおじさんになっていた。

そんな時、どういうわけか人を思い通り動かす超能力を得る。

それからは、地味な研究から遠ざかり、政界、経済界との人脈を構築していった。


日本一の大学が幸いして、同期が各界のトップにのし上っていたから人脈はすぐにできた。

そして、建設会社の社長をコントロールし、常務として会社を隠れ蓑にした。

一流企業の常務といえば、私の本質を何も知らないのに、誰もが信用してくれる。

人間なんて、表面しか見ない、本当にバカな生き物だ。


ただ、それからも、ピエロのように実力者の前でバカな人を演じてきた。

相手から信じてもらうために。自分に自信がなかったからかもしれない。

でも、いつも人の上に立ちたいという気持ちがあり、現実との葛藤で苦しんできた。


でも、今、俺は、目の前にいる軍隊の頂点にいる。

しかも、長年、密かに兵法も学んで知識もある。

さらに、誰でも心を操れるこの超能力を備えた俺は無敵だ。


俺をバカにしてきたやつらは、この世からいなくなればいいんだ。

日本にいる超能力者のリーダーである凛も、俺の手のひらの上で動いている。

日本の頂点には俺がいる。俺は、それに相応しい存在なんだ。


俺は誇らしげに、ゆっくりと甲府の方向に指を向ける。

今井の軍隊がいる甲府の施設を攻撃しろと。

全員が俺に敬礼をし、無数の戦車が甲府方面に進む。


戦車、足音、規則的な大きな音が甲府に向かって鳴り響く。

兵士は、脳を支配されていることもあるが、恐怖はなく、甲府破壊に向けて1つになる。

その日のうちに決着すると確信していたが、夜に甲府に向かった兵士から連絡が入った。


「河田さん、甲府を攻撃しましたが、軍隊はどこにもいないと報告がありました。」

「おそらく、攻撃されたことに弱気になり、地下拠点に退避したんだと思う。今井はそんなやつだ。全ての地下退避拠点を速やかに攻撃しろ。」

「わかりました。」


俺は、すでに甲府の軍事施設の構造はすでに調べてある。

地道な人生を経験しているから、やるべきことは全てやることに苦はない。

しかも、あれだけの軍隊をすぐに別の地点に移動させるのは無理だ。


ということは地下に退避したとしか考えられない。

俺は、それぞれの地下拠点を集中砲火するよう命令を下した。

今井の軍隊は、そこまで甲府の軍事施設が知られているとは思っていなかったのだろう。


狭い地下空間に敵が流れ込み、手榴弾で爆破を続ける。

塀に閉じ込められ、電気も途絶え、真っ暗な空間に追い詰められた兵士達。

逃げ道を失った兵士達を手榴弾の閃光が包み込み、爆風にさらす。


たった1晩の時間でも、兵士達は恐怖に支配され、永遠の地獄を感じていた。

暗がりの地下でどこにも逃げ場がない兵士達は大混乱に陥り、自ら自滅していく。

誰もが、まるで泥水が口や目から入ってきて土砂に押しつぶされる気持ちになっていた。


兵士達は次々と死に、生き残った者も、精神的に限界を迎えていた。

心がおかしくなり、外に飛び出し、銃弾の餌食となる者も多発した。

その中で、今井は今後の作戦を練り直していた。


「今井さん、敵は、どうしてか我々の地下拠点を知っているようで、集中砲火があり、9割の軍隊は死亡しました。我々に残された方策は、残った軍隊で韮崎の施設を一点攻撃するしかないと思いますが、いいでしょうか?」

「いえ、まず、冷静になりましょう。地下退避拠点を知っているということは、今、私達にどれだけの武力が残っているのかも正確に知って、待ち構えているかもしれない。また、敵の兵士が、私達が認識していた数より増えているということは、どこからか補給されているのだと思う。私達は、韮崎にどれだけの敵がいるのか把握できていないのよ。また、仮に、韮崎の軍隊を潰したとしても、今後、また、送ってきて、数で上回る相手に屈せざるを得ない状況になるかもしれない。まずは、ここで作戦を練り直しましょう。我々は屈しない、あなどれないということを示すために、河田の軍隊を圧倒的に踏み倒すことが重要よ。」

「そんなに慎重では、何もできません。」

「いえ、ちゃんと作戦は考えてある。大丈夫だから、私を信じなさい。」


汗だくで、砂埃に塗れた軍曹は、暗闇の中、私に抗議をする。

戦争の素人にどこまで付いていくべきか不安になりながら。

ただ、ここまで来た以上、私を信じようとしていた。


私は、軍人を各チームのリーダーにして民間人を軍隊を編入する。

もう専門の軍人はほとんど亡くなっていたから。

そして、逃げ、隠れるだけじゃなく、ライフル銃で、敵に向かっていく。


敵も同じ人間なので、脳が支配されているとは言っても、恐怖は感じていた。

味方の兵士が撃たれ、死ぬ姿を見て逃げ出す兵士もいた。

その中で、河田の軍隊も2割程度は減っていく。


それでも、最初は、河田側が優勢だった。

激しい戦いが続き、次々と私達が負けていく。

相手のテクノロジーは格段に私達を上回っていた。

しかも、なぜか、こちら側の情報は筒抜けだった。


もうこれ以上攻撃を受けると耐えられない。

その時に、私は、先日私に抗議をした軍曹を呼び出した。


「言いづらいけど、お願いしたいことがある。」

「今井さん、なんですか?」

「昔の戦争で、特攻隊というのがあったわよね。申し訳ないけど、夜、敵が寝ている間に、手榴弾を持って突っ込んでもらいたいの。そして、怪我を負っても敵中に入り込み、そこで手榴弾で大勢の敵を殺す。」

「それじゃあ、みんな死んでしまうじゃないですか。でも、それしか勝てる方策はないということなのですね。たしかに、相手陣地に入り、自爆すれば、大勢の敵を巻き込める可能性は高いかもしれない。しかも、夜寝ているときに密かに潜り込めば、敵に撃たれずに、敵陣の中心に潜り込める可能性が高い。相手も、もとは同じ人間。死ぬことへの恐怖は我々と同じ。どうして、これまで気づかなかったのだろう。」

「この方法は、河田側の兵士がこちらを侮り、過信している状況になっていることが成功の前提なのよ。」

「そうですか。ただ、強制はできないので、みんなに相談してみます。でも、みんなの心は一つです。間違いなく、みんな賛成して、参加してくれると確信しています。」

「そうね。強制はできないものね。でも、これで勝てるわ。敵に漏れないように、今夜中に相談して決めてもらって。」


30分もしないうちに、その軍曹は、私の前に現れた。


「今井さん、すべての軍隊のチームリーダーは今井さんの作戦に合意をしてくれました。というより、人類を守るために、全てのチームリーダーが、その作戦をやりたいと言っています。そして、配下のメンバーには、嫌なら参加しなくていいと伝えたうえで、これからすぐに作戦を開始します。暗闇の中で少しでも敵に近づいて、敵陣で自爆することで、大きな効果があると思います。敵は今は静かなので、明日の戦いに備えて寝ているんでしょう。」


人生最後の賭けに震えながらも、人類のためと目が輝く。


「民間人も全て、この作戦に参加すると言っていると聞きました。私も、1つのチームを率います。是非、やらせてください。」

「今回は、私も参加する。私も相手の陣地に行って、自爆するわ。あなた達だけを死なせるわけにはいかない。」

「それはだめです。人類を守るのはあなたの役割です。だからリーダーとして、ここで全体の指揮をとってください。」

「本当にそれでいいのかしら。みんなに酷なことをお願いしてしまって、ごめんなさい。でも、これで私達は勝てる。将来の人類のために、よろしくお願いします。」


私は、軍隊のリーダーの未来に向けた明るい顔を見つめ、手を握った。

リーダーは、こんな厳しい状況なのに、任せてくれと笑っている。

私は、頬に落ちた雫を手で拭った。


夜中、自爆する人間の攻撃が始まる。

自ら死ぬことを代償に攻撃することを考えたことがなかった河田の軍隊は大混乱となった。

寝ていた敵兵は、想定外の状況に何をすべきか分からず、その場を動けない。


起きたばかりで、自分がどこにいて、敵がどこにいるのか把握できない。

横にいる兵士も敵かもしれない。

しかも、次々と爆音が聞こえ、敵がどこから攻めてくるのか分からない。

そのうちに、誰かが走り寄り、爆風に包まれる。


周りが全て敵に見え、恐怖に支配されることで、同士討ちをする兵士もでてきた。

そこを自爆するこちらの兵士が突っ込み、呆然とする兵士は爆風に飛ばされていく。

そして、河田の兵士は1日にして壊滅状態になった。


その中で、河田の居場所が分かり、私達の兵士は、そこを集中的に攻撃する。

近くまで行ったときに、河田の姿を捕らえた。

河田を狙うには今しかない。


私達の兵士は河田に向かって走り寄るけど、敵も河田を守り、多くの銃弾を浴びせてきた。

目の前に河田がいるのに、なかなか近寄れない。

双方が一進一退の状況が続いた。


お互いの力が尽きてきたころ、空からプロペラの音が鳴り響く。

ヘリコプターからロープが降ろされ、河田が空に昇っていく。

だめ、今を逃したら河田を殺す絶好のチャンスはもう来ない。


でも、敵の銃撃は更に強まり、こちらの兵も河田に近寄ることができなかった。

ヘリコプターはあっという間に空高く飛び立ち、こちらの銃弾はもう届かない。

その中で、河田を確保できず、逃げるのを許すしかなかった。


ただ形勢が逆転したのも事実。今がチャンス。

残された兵士達を攻めたて、逃れた兵は100人に満たなかった。

ただ、私達に残された戦える人もほとんど残っていない。


これ以上、敵を追撃する余裕はなかった。

その日は、味方の兵士は力が尽き、地面に倒れるように寝込んでしまう。

翌日の朝日を浴び、どの兵士もやっと立ち上がることができた。


翌日、韮崎の施設に行ったものの、そこには誰もいなかった。

河田を殺すために、少し時間はかかるけど、民間人で軍隊を再構築するしかない。

私は、多くの犠牲を払いながら、目的を遂げられなかった自分を責める。


一方、河田は、凛がいる伊東に向けて必死に逃げていた。

凛と合流して組織の再構築を図るために。

人類の未来に向けた次の闘いはもう始まっていた。

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