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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第1章 超能力

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2話 はじまり

私は、アジアでコルトと接するギスタンのバーで夜遅くまで飲んでいた。

照明を落とした部屋で大きなビートが鳴り響き、若者の熱気が充満する。

歩くと人とぶつかり前に進めないぐらい人で溢れる。


私の前には間接照明で照らされたボトルが棚に並び、太ったおじさんがお酒を作る。

目の前で、ウォッカのショットが次から次へと運ばれていった。

それを若い男性10人が一気に飲み干し、大声をあげる。


こんなシーンが何度も繰り返される。

男性って、単純というか、子供みたい。でも、それが小気味よい。

バカな男性達を眺めながら、ただカクテルを傾け眺めていた。


カウンターで1人で飲む私に多くの男性が声をかけてくる。

彼が浮気をし、別れを言い放ってきた私に、そんな誘いに応える気力はない。

暑い夏の夜のことだった。


私の親は、10年間日本大使で、私は7歳のときから日本で暮らしていた。

だから、この国よりも日本の方が親近感はある。

でも、日本ではいつも外国人と扱われてしまうことに疎外感を感じていた。


顔はどこから見ても日本人と同じなのに、国籍から日本人ではないと誰もが見ていた。

2世が珍しくない日本でも、日本人ではないと、誰も深く付き合う対象と見てくれない。

しかも、ほとんどの日本人が知らないギスタンの人なんて誰も関心がない。


日本人は誰にも優しいと聞いていたのに、実際には、輪の外にいる人には関心も示さない。

仲がいい人達は、本当に楽しいと顔から笑みが漏れるけど、それはその輪の中だけ。

よそ者である私は、学校ではどの輪にも入れず、お昼ご飯も1人で食べていた。


17歳で帰国したものの、ギスタンのことを何も知らず、この国でも外国人と扱われていた。

長年、日本で過ごすことでギスタン語が使いこなせなかったことも原因かもしれない。

結局、どの国の人にもなれないことが寂しい時間を過ごす。


そんな時、日本に留学したことがある男性と気が合い、付き合い始めた。

ただ、彼は首相の息子であり、どこに行っても女性の人気の的だった。

そんな彼にとって、最初を捧げた私も、大勢の一人に過ぎなかったと気付く。


彼の部屋に行くと、知らない女性とベッドの上で一緒に戯れていた。

彼は、私に気づくと、謝ることなくふてくされてタバコを吸い、目も合わせない。

ベッドで横にいる女性も、こんな女もいたのと笑って、私に出て行けと手で払う。


最初から、彼は本気ではなかったのだと思う。

それなら、どうして私に声をかけたのかしら。

あり得もしない夢にすがっていた自分がバカだったと悔やんだ。


私は、もう会わないと金切り声をあげ、部屋を飛び出す。

部屋を出て、これまでの自分が浅はかだったことで頭はいっぱいだった。

夜道を下を向き歩き、気づくとこのバーに来ていた。


私はいつもそう。優柔不断で、自分の本当の気持ちを伝えられない。

そもそも、自分の本当の気持ちなんて自分でさえ分かっていない。

いつもふらふらしている、そんな自分が嫌だった。


また、そんな自分だから騙され、利用されてしまう。

そんな私を彼は陰であざ笑っていたんだと思う。

それに全く気付かず、いえ、事実に目をそらして生きてきた自分が悲しい。


考えが整理できず、声をかけられても一緒に話す気分でもない。

ただ、雑音に包まれ、みんなと一緒だと思いたかっただけかもしれない。

雑踏の中にいることで、かえって一人になれると思ったのかもしれない。


どんなに繕っても、彼に相手にもされない惨めな存在だということぐらいわかっている。

でも、そうでもしないと、どうにかなってしまいそうだった。

そんないくつもの矛盾した気持ちが錯綜し、飲みすぎてしまったのかもしれない。


お金を清算し、暗く、人通りもない夜道を1人で帰ることにした。

酔っ払っているせいか、お店の窓ガラス、電灯、いろいろな物が歪み、ふらつく。

もう歩けなくて、レディースの洋服がウィンドウ越しに見える店の前に座り込んでいた。


その時、目の前に眩しいヘッドライトで近づいてくる車が現れる。

その車から勢いよく3人の男性が降り、いきなり、私の頭に袋をかぶせた。

抵抗しても押さえつけられ、車の中に引きずり込まれてしまう。


なんとか逃げようと暴れたけど、男性達の力にはかなわない。

暗い道路を走る車の中で注射を打たれ、視界がぼやけてくる。

目が覚めると、手足を縛られ、手術台の上にいた。


周りを見渡すと、監獄のような部屋で、ドアは格子になっていて、外から鍵がかけられる。

部屋の中央には手術台があり、バイタル測定器等、いくつかの計測器が置かれている。

私には強い光が当てられていて、それ以上の様子はよく分からない。


手術台に縛られた私を、2人の白衣を着た医師が見下ろし、検査データをチェックする。

私が目覚めたことで、どこかに連絡を入れている。


「ここはどこ?」

「ここはコルトだ、コルト語は分かるか?」

「コルト語は話せるけど、どうして私はコルトにいるのよ?」


全世界を超能力者が支配するため、私が日本のリーダーになるのが最適だと言っている。

超能力者が全世界を支配するって、なんのことだろう。


私を選んだのは、日本に長期間いて、顔も日本人そのものということが理由らしい。

しかも、私の血液が実験中のロボットに最適だという。

私のことを十分に調べ上げていることは分かった。


コルトは、偶然、超能力者になる薬を開発したらしい。

この薬は、血液中でロボットとなって脳を支配し、その一部が超能力者になるという。

超能力者にならない人は、超能力者によって操られるようになると自慢げに話す。


でも、突拍子もない急な話しで何を言っているのか理解できない。

ただ、白衣を着た医師は真剣なまなざしで私を見つめ、冗談ではなさそう。

その医師は、カルテを持って、他の医師と淡々と会話を続ける。


私も脳を支配し、奴隷にしようとしているのかしら。

医療の専門用語が多いので、会話はよく理解できないけど、そうではないらしい。

その中で、私の血液を調べたところ、超能力を備えるに十分だったと話している。


ただ、どの人にどのような超能力が身につくかはまだ解明されていないという。

人の考えていることが読める能力、他人の体に変わる能力、予知夢の能力。

何らかのきっかけで、多種多様な能力が発現するらしい。


この研究はすでに10年も続けられ、超能力者も40人はいると言う。

最初は、超能力者への恐怖から、超能力者は迫害され、暗殺された。

ただ、その能力を活かし、時間とともに超能力者がコルトを支配するに至る。


そんな話しの後、私の腕に注射が打たれ、1年半、隔離され、検査をされた。

そして、私は、怪我も病気もしない体になる。


ナイフで切られても、痛いけど、傷ができたり、血が出たりはしない。

というより、傷ができても、あっという間に元通りに戻ってしまう。

隔離された部屋でエボラ出血熱のウィルスを打たれても感染する気配はなかった。


まだ1年半だけど、永遠に見た目は全く変わらず、これからも変わらないと告げられる。

発想の転換で、死なないなら、脱出時に銃撃を受けて死ぬこともないことに気づいた。

私は、コルトの隔離施設から脱出し、必死の思いで、ギスタンに戻る。


でも、私がギスタンに戻ると、報復としてギスタンの首都は圧殺された。

私は死なないけど、従わないと、私の大切な人達を抹殺するという警告。

そして、焼け野原となったギスタンの道を呆然と歩く私は、コルト兵に捕まえられた。


「もう、分かっただろう。ギスタンの人々が死んだのは、ここから逃げたお前のせいだ。お前のせいで、みんな死んだんだよ。お前には我々に従うという選択肢しかないんだ。」

「私には、親も、知り合いもみんな死んで、もう失うものはない。だから、お前達に従う必要はないわよ。」

「そう言うだろうと思っていた。だからお前の両親、妹を監禁している。お前が従わなければ殺すだけだ。」

「まだ生きていたのね。でも酷い。分かったわ、私は何をすればいいの?」

「私達は、超能力者によって全世界を支配しようと思っていて、日本も同じだ。そこで、その第一歩として、日本に我々の拠点を作ろうと考えている。お前には日本に行ってもらい、日本で指揮を取ってもらう。」

「私には拒否する選択肢はないのね。」

「そうだ。ただ、超能力者が迫害されない国を増やすために、お前が日本を支配することはお前のためにもなる。」


私は、人々を支配したいわけじゃない。

また、そのために、人を殺したり、闘ったりしたいわけでもない。

私は、もともと人と争うことが苦手なの。人と温和な関係の中で生きていきたい。


でも、家族のためにコルトに従わなければならない。

そう、いつも、人のせいにして生きるのが私なの。

私には、信念というものがなく、気づくと誰かが用意したレールを歩いている。


そんな私には、暗黒の将来しか待っていない。しかも永遠の。

こうして、密かに私は日本に派遣された。

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