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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第4章 超能力者の反撃

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3話 他人に乗り移る

私が、超能力があると気づいたのは電車事故の時だった。


朝、出勤で満員電車に乗っていった。

電車が少し遅れ、ホームが混雑していたので、女性専用の先頭車両に押し出されていた。

電車は遅れているせいか、いつもより急いでいて、運転は乱暴で、揺れが大きい。


電車の中は蒸していて、後ろから押されただけなのに、前の女性にぶつかると睨まれる。

女性しかいないのは、いい面と悪い面があるけど、恥じらいや遠慮がなくなるのは嫌。

私だって、意図的にぶつかっているわけではない。


女性特有の柑橘系のような甘い匂いが充満していた。

座席に座っている女性はマスカラで器用にメイクをしている。

前に立つ女性が座席に押し出され、服にマスカラが付かないか気にしているのを無視して。


誰もが、この電車から早く降りたいという、ねっとりした空気が体に纏わりつく。

その時、電車が傾く。みんなは左側に倒れかかり、更に車両は左側に傾いた。

カーブに差し掛かった時、列車は傾き、レールから外れ、正面のビルに衝突してしまう。


電車が傾いたとき、窓から目の前のマンションで洗濯物を干す女性が目に入った。

お互いに、目が合ったと思う。その女性も、驚いてこちらを見つめていた。


前からは壁が、後ろからは女性達に押し潰され、息ができない。

目の前が真っ暗になるなか、助けてと、私は念じた。


何が起こったのかしら。横のマンションに電車が衝突している。

電車の一両目は押しつぶされ、マンションも大火災になっていた。

そういえば、私はさっきまで電車の中にいたのに。


ふと下を向くと私がさっきまで着てた服とは変わっている。居る場所も変わっている。

死ぬ直前で私は何かの力を使ったんだと思う。

この状況から考えると、人と入れ替わる能力。

そんなことがあり得るのか信じられないけど、今の状況はそれしか説明がつかない。


私は、部屋に入り、自分が誰なのか分かるものを探した。

明日の4/1入社というテレビ局のアナウンス部への通知を見つける。

新入社員というと、3歳若返っていることになる。


鏡を見ると、そこにはスタイルがよく、美形の女性が立っていた。

唖然として、バカのような顔をして佇んでいる。

この女性には悪かったけど、死ぬことからは免れたと悟った。


私は、翌日、テレビ局に行き、入社式に参加し、椅子に座る。

新卒は20名ちょっとで、大体がコンテンツ制作・ビジネス部門という配属。

アナウンス部門は私と男性の2人だけだった。


社長がようこそと挨拶を始めた。

女子アナって、私には経験がなく、やっていけるか不安もある。

でも、外見はとびっきり美人で、痩せていてスタイルが良い。

女子アナというぐらいでとっても透き通った声。


いきなりテレビ局新人研修が始まった。

職場見学ということでニュース番組の現場を通る。

そこでは、私が乗っていた電車の衝突事故を報道していた。


特に、先頭車両はめちゃくちゃだった。

その壁には、お煎餅のように潰された女性達がいっぱいだと報道されていた。

あの中の1人が私だと思うと、何もわからず死んだこの体の持ち主には申し訳ない。


でも、今日からは、安積 陽菜という新人女子アナとして暮らすしかない。

むしろ、こんなに魅力的な顔とスタイルなら、人生をやり直せる。

私は、昔から引っ込み思案で、地味な生活をしてきたから。


私の人生は惨めなものだった。

特に、顔は周りから陰険だと言われ、体形は子供のように魅力がない。

誰にも話す勇気はなく、周りからは、じめじめしていると言われ、虐められる。


持ち物がなくなり、トイレの汚物の中から見つかったなんてことは数限りない。

男性も、何のためらいもなく、私をブスと呼ぶ。

私とぶつかったりすると、雑菌が移ると大騒ぎをしていた。


女性も、みんなが私を無視し、いつもボッチで過ごしていた。

トイレで急に生理が始まって助けを求めても、誰もが私だと気付くと無視をした。

なんとかトイレットペーパーを当て外に出ても、血がついたスカートを指さし笑う。


そんな私がこんなに美人になれたのなら人生をやり直せる。

女性は、幸せに生きていくうえで見た目が一番重要だもの。

こんな不思議な状況なのに、笑いが止まらない自分が不思議だった。


OJT中心の研修が始まり、先輩達の指導は厳しかった。

でも、せっかくの人生のやり直しだから、言われたことは完璧にこなす。

それが認められて、バラエティ、スポーツ、いろいろな番組に出ることができた。


野球選手から合コンに誘われることもあった。

周りは有名選手ばかりで、酔っ払って、朝起きたら、選手の横で寝てた日もあった。

やっぱり、女性は容姿なんだと嬉しさが体の中から溢れる。


でも、昨晩は忘れていたけど、たしか、彼には奥様がいたような。

その後、彼から何度か連絡が来たけど距離を置いた。

奥様と充実した時間をお過ごしくださいと丁寧にお断りをする。


昔の私は、自分の容姿が標準以下と自覚していたから、男性には積極的にはなれなかった。

でも、この美貌とスタイルですっかり自信がでてきた。

どんな男性も私を誘い、私を大切にしてくれるのは快感。


気になることもある。

体が変わってから、仕事ができない人をみるとイライラし、厳しくあたってしまう。

また、飲み会とか行くと、上司や先輩の批判や、人の噂話しをしてしまう。


昔は、そういう人は嫌いだったけど、そんな嫌な自分がいて、自制できない。

脳内で分泌する成分が人によって違い、それに性格が影響されるのかもしれない。


軌道に乗ってきた時だった。いきなり、アナウンス部長に呼ばれた。

私が学生の時に、キャバクラで働いていたと明日の週刊誌に出るからと告げられる。

そして、期限未定で自宅謹慎になってしまう。


もともと事故前のことは知らないんだけど、間違いですと何度も言った。

でも、写真とか証拠があって、週刊誌は止められないと言われた。


その後、週刊誌の記事を契機にして、水商売アナとか言われて、清楚系から転落した。

毎日のように汚らしい女性とテレビで批判される。

人生をやり直せると思ったのに、そんなに簡単じゃないと1人暗い部屋で過ごした。


その後、減給され、アナウンス部門から総務部の備品管理係に配属転換となる。

目の前で汚い女って言われたり、転落すると、その速度は早かった。

そんな中で、会社にいることが辛くなって、会社に出社できなくなってしまう。


転職しようとしたんだけど、顔と週刊誌の記事は誰もが知っていて厳しかった。

自宅近くにある公園のベンチで、うなだれ、夕日に涙目を向けていた。


公園では、目の前の砂場で子供達が大声で笑いながら遊ぶ。

そう言えば、子供の時は、私も無邪気に笑いながら遊んでいた。

いつからか、そんな簡単なことができなくなっていた。


女性は容姿だと、美しくなった顔をみて喜んでいたのに。

どうして、私は幸せになれないんだろう。

なにも、悪いことなんてしていないのに。


もっと悪どく生きているのに、幸せそうな女性は山のようにいる。

人の足をひっぱり、マウントをとって相手を傷つけ、他人の金を巻き上げる人もいる。

私は、そんなことをせずに、品行方正に生きているのに、どうして?


私の前世が悪かったの?

そんなことは私のせいじゃない。

仮に、そうだったとして、どうすればいいって言うの?


私は、ただ普通の幸せが欲しいだけ。

これからどうすべきか頭が真っ白になっていると、横に座った女性から声をかけられる。

その女性を見上げると、夕日が後ろから輝き、天使のように笑顔で私を見つめている。


「あれ、あなたは有名な女子アナですよね。とても失礼なお願いなんですけど、一緒に写真を撮ってもらえませんか?」

「あなた知らないんですか? 私が水商売アナって連日、批判されていることを。」

「そんなこと気にしているんですか? 男性はキャバクラとか行くのに、どうして女性がキャバクラで働いてはダメなんですかね。理解不能。私はそんなこと気にしませんよ。」


暗くなっていて気付かなかったけど、目の前の女性から同じ匂いを感じた。

この匂いは、昔、どこかで感じたことがある。

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