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最終決戦  作者: 一宮 沙耶
第4章 超能力者の反撃

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1話 チーム

凛の前に5人の超能力者が集められていた。

吉祥寺にある第3拠点。廃業となったレストランの一室。

韮崎では、大勢の人が出入りすると目立つので、第3拠点が選ばれた。


井の頭公園に隣接する洋風の一軒家。

昔は、高級フレンチとして有名だったらしいけど、今は廃業している。

井の頭公園には、もう散歩する人なんていないから。


夕日が井の頭公園を橙色に染め上げる。

その景色は、昔と何も変わらずに美しい。

ただ、最近は手入れがされていないのか、木々が鬱蒼と茂っている。


やや高台にある洋館に電灯が灯る。

男性3人、女性2人が玄関のベルをならし、中央のリビングに集まる。

5人は、大きなテーブルを囲んで座り、リーダーである私を不安そうに見つめている。


「これから、この5人で政府の我々への迫害を防いで欲しい。みんなのようなチームは200以上あるから、絶対、私達が勝てる。」

「わかりました。我々は、願って超能力を身に着けたわけではないのに、政府が我々を迫害するのは許せません。私は、安積 陽菜。他の人に乗り移る能力を持っています。」


目の前で話す美しい女性は、昔、女子アナをしていた人。

学生の頃、キャバクラで働いていたとしてTVから追い出され、社会に不満を抱えている。


「俺も同感だ。俺は、榊原 幸一。天候を操る能力を持っている。」


残りの3人も、次々と自己紹介をしていく。


「僕は、佐々木 隆一。人を溶かしてしまう力を持っているんだ。今、新卒で商社で働いています。」

「人を溶かしてしまうなんて怖いわね。でも、そういう力も必要なんだと思う。私は、柏木 結愛。透明人間になれる。私も学生で、今度の春に卒業する。」

「すごい力だね。透明人間になっているときは、服を着ているの?」

「変なこと聞かないでよ。裸なはずないでしょう。」

「着ている服も透明にするって、どういう仕掛けなんですか?」

「本当は透明になっているわけじゃないの。私を見ている人へ、私の表面に後ろの背景を投影するだけなの。わかるかな。」

「そういうことか。スクリーンに後ろの風景を投影すれば、スクリーンは見えなくなるってわけだね。」

「そうそう。だから、体温もあるし、体重もあって絨毯とかの上では足跡ができる。でも、それを理解して慎重に行動すれば、気配は完全に消せる。ただ、数千人に透明に見せるのは無理かな。まあ、100人ぐらいなら大丈夫だけど。」

「すごいね。」


柏木さんは男性陣に人気があるみたいね。

緊張は途切れたように見えた。

きっと、連携が取れるいいチームになるに違いない。


「さて、私が大取りかな。高田 悟です。私は、10m以内にある物なら、どんなに重い物でも念じれば動かすことができる。」


私は、席から立ちあがり、5人に笑顔で作戦を伝えた。


「まず、官房長官、警視庁長官、公安部長、科学技術庁長官、経団連会長、経済同友会代表幹事は、超能力者暗殺の首謀者だから抹殺しなければならない。彼らを暗殺した後、政界のトップに、超能力者を据えろ、また、脳を支配している官僚達と、警備のための兵士を周りに配置しなさいと要望を伝える。そうしないと次の犠牲者が出ると脅し、それでも認めなければ、次の要人を殺し続ける。そうやって、私達が安全に暮らしていける世の中を作るの。」


また、過去の失敗を踏まえ、自らの防御策も伝える。


「そのためにも、この5人が首謀者だと知られないようにしなければならない。まずは、榊原さんが、科学技術庁長官、経団連会長、経済同友会代表幹事を雷で打ち、殺しなさい。幸いなことに、3人の宴席が今週金曜日に高輪プリンセスホテルで開催される。お店は庭園の中なので、3人はホテルで待ち合わせをし、庭園を鑑賞してお店に行くという情報が入った。遠くから狙えば、榊原さんの素性はばれないはず。」

「それなら簡単だ。ホテルに宿泊し、部屋から庭園を見ていればいい。疑われることもないはず。」


榊原さんは自慢げにいう。


「次は、安積さんの番。安積さんは、女性記者に成り代わり、総理と警察庁長官が出席する会見に出て、爆弾が入ったマイクを向け、爆弾を起爆する。会見は、来週月曜日。安積さんは、起爆の瞬間に別の人に成り代われば、素性もバレないし、爆弾の被害も受けない。」


安積さんは、緊張しながらも頷く。


「公安部長が一番難しい。いつも警戒を怠らず、2人のボディーガードを横に置いている。スケジュールも隠されていて、日々、スケジュールが更新され、どこにいるか事前に把握できない。ただ、月に1回だけ、ホテル住まいをさせている奥様のところを訪問していて、今月は、来週の水曜日に、大胆にも東京のフォーシーズンズホテルだと分かっている。」

「どうして、そこまで分かるんですか?」

「私達には、人の考えていることが読める人を集めて1つのチームにしているの。そんなチームが多数ある。その人達が、日々、要人周辺から情報収集を行う。そして、未来予知能力を持つ人を集めたチームがあって、いろいろな角度から作戦を練る。そして、みなさんのようなチームに実行してもらっているの。」

「なるほど。組織戦なのですね。それで、どう公安部長を暗殺するのですか?」

「まず、高田さんが、廊下の先に隠れ、部屋の前で待機するボディーガードを深海に移動させる。そして、あらかじめ部屋にいて透明になっている柏木さんがドアを開け、佐々木さんを部屋に入れなさい。そして部屋に入った佐々木さんは、公安部長と奥様を溶かす。こういうシナリオ。」

「うまく行きそうですね。」

「でも、自分の力を過信しないこと。想定外のことが起きたら深追いせずにすぐに逃げることが重要。例えば、佐々木さんが部屋に入って、別のボディーガードがいたら、すぐにドアを閉めて逃げなさい。そのボディーガードも溶かせばいいなんて考えていたら、公安部長から拳銃で撃たれるかもしれないし。」

「わかりました。」

「また、皆さんのことは政府にバレていないとは思うけど、暗い夜道で後ろに気配を感じるとか、なにか不審なことがあれば、すぐに連絡して。昔、そんな気配を感じながら、気のせいだろうと軽んじて暗殺された同志も多いから。」


5人は、表情が再び緊張しつつも、自分達を迫害する政府への敵意を露にする。

そして、同志として、結束を誓った。

最後の晩餐になるかもしれないとして、凛が出したフレンチを前にワインで乾杯する。


人の気配がしない公園は真っ暗で、部屋の窓からは暗闇しか見えない。

今夜は、新月のせいかどこにも光は見えなかった。

明るく、笑い声が漏れるのは、この部屋しかない。


ある意味では都合は良かった。

誰かが敷地に入り込めば、その音ですぐにばれるから。

でも、それよりも、これからの未来を象徴するかのようで不気味さが優っている。


誰もが恐怖を感じながらも、笑顔を繕い、明るい未来を語っていた。

佐々木さんは、大学を卒業したら弁護士になると大声で話す。

安積さんは、アナウンサーを降板されたことが許せなくて、次は男性になると言っていた。


次の幸せを手に入れるために前に進む、ごく普通の人達だった。

凛は、自分の将来のために、この5人を巻き込んでしまったことに、心の中で謝る。

そして、願ってもいないのに、こんな体にしてしまったコルト国を再び恨んでいた。

憎むだけでは何も変わらないのに。

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