第23話 お昼の情報番組
お昼の情報番組、テレビの向こう側では、才牙の評価が天井知らずに上がっていた。
「見てください、この華麗な身のこなし! 凄い、凄すぎます! A級を一人で討伐ですよ!? しかもこんなに可愛いなんて……まさに地上に舞い降りた天使です! はやくも、ファンクラブもできてますよ!ちなみに私は一桁です❤️」
キャスターは完全に仕事であることを忘れ、目がハートマークになっている。報道の中立性など、この「奇跡」の前では無いに等しかった。
「私情がダダ漏れですねぇ。しかし、専門家の立場から見ても賞賛しかありません。これでA級ソロ討伐は、魔法少女の歴史が始まって以来、歴代で12人目。これは人類にとっての希望ですよ、これは素直に喜ばしい事です」
いつもは厳しいコメントをする眼鏡の男性コメンテーターも、この日ばかりは甘めのコメントを残した
しかし、頭部が星のようなシルエットをした妖精は、いつも通りの欲望塗れのコメントで、同業者として莫大な報酬を得たであろう、彼女の契約妖精に対する嫉妬と羨望を隠そうともしない。机を叩いて吠えていた。
「すげー! いいなー羨ましいぜぇ⭐️ A級単独ならボーナス込みで、幾ら妖精ポイント入ったんだ!?おーい! この子の契約妖精! 見てるか!? 今夜は奢ってくれぇー!!⭐️⭐️」
「妖精は本当に自由ですねぇ……。そういえば、入ってきた情報によると、この戦闘の後、彼女は魔法科と正式に契約を結び、公認魔法少女として登録されたらしいですね」
「はい! お名前は『さいかちゃん❤️』! 本当に可愛らしい、響きまで天使のようなお名前ですよね! 私はもう、スマホの待ち受けを彼女の切り抜きにしちゃいました!」
キャスターは拳を握りしめ、公共の電波を使って熱烈なファン宣言を繰り広げている。
「ただ、心配なニュースもありまして……。昨日の激闘による負傷、および精神的な疲弊が著しく、現在は魔法科の施設で安静中らしいですね。そのため、本人の会見や公の場への紹介は当面控えるという発表がありました。心配ですね」
「あんなに頑張ったんですもの、相当無理をされていたんでしょうね。頬からも血が流れていましたし……。ああっ、早く治ってほしいです。さいかちゃん、負けないで!!」
お茶の間を賑わせるニュース番組。そこで、一人の女性タレントが冗談めかして口を開いた。
「えー、でもさぁ。重傷とか安静とか言ってるけど、本当は逃げられただけだったりしてぇ~だって、あの後誰も彼女を見てないんでしょ?」
スタジオに軽い笑いが起きるが、眼鏡の男性コメンテーターが、即座に鼻で笑ってそれを切り捨てた。
「はー……これだから素人は。いいですか? 相手は世界機構ですよ? 物理的な厳重警備はもちろん、魔法的なセキュリティも何重にも張り巡らされている。あの魔法科から、子供が一人で逃げ出すなんてのは、不可能なんですよ?」
知識人ぶった男性の断定的な物言いに、女性タレントは「えー!そうなんですか~すごーい」とお花畑なコメントを残した
こほんと咳を入れて、話題を変えるキャスター
「それはそうと、第七地区への移住希望がふえてるとか!」
「サイカさんが第七地区を根城にしていると言う情報からのようですね、魔法少女として登録した以上、どこの地区にも出動要請があれば出動する訳ですから、皆さんには冷静になって欲しいものです」
「本当ですね!ワラワラと人が来たら、サイカちゃんが困ってしまいます!自重して欲しいです!私は第七地区住みですけどね❤️」
「ははは、住みたければ勝手に住めばいいんだぜぇ⭐️」
「……この番組、苦情で終わりそうですね」




