7話〜スキル【コスプレ】〜
7話〜スキル【コスプレ】〜
俺は酒場で夕飯を食べながら、白石さんの働いている姿を見ていた。
初めて接客業をしているとは思えないほどテキパキと働いている。
怪しい。
何か裏があるんじゃないかと考える俺。
「【コスプレ】スキル……まさかな」
この酒場にはウェイトレスがたくさん働いている。
それなのに何故か白石さんに男達の熱烈な視線が集まる。
「おい!あいつ……」
「あれが噂の新人ウェイトレスか」
「可愛いじゃん」
周りの人たちも白石さんを話題にして盛り上がっているようだ。
「おーい!そこのウエイトレスちゃん!こっちにおいで!」
「はーい!只今参ります!」
そう言って白石さんは注文を受けに行く。
注文が終わると次の客の元に向かった。
「すみません!こちらを1つください!」
「はい!承りました!」
白石さんは手際良く注文を取り終える。
その後も次々と注文を受け白石さんは休む暇もなく働いていた。
そんな白石さんの頑張りが報われたのかあっという間に完売状態になったのだった。
「ふぅ〜疲れたわ〜」
と白石さんが店から出てくる。
「黒瀬!待っててくれたの?」
「ああ……まぁな……」
「ありがとう!それじゃあ帰りましょうか」
「そうだな……」
そう言って俺達は帰路についたのだった。
家に着くと俺達は部屋でお茶を飲む。
「黒瀬!今日はお疲れ様!」
「おう……白石さんもな……」
「黒瀬は楽しかった?」
「まあ……それなりにな……」
正直いうと、白石さんのあの働きぶりに裏があるんじゃないかと考えていた。
「なぁ、白石さん。もしかしてスキル使ってた?」
俺が声をかけると白石さんは固まった。どうやら図星だったらしい。
「ど、どうしてそれを!」
「いや……なんか怪しいと思ってな。だから問い詰めた」
「そっか……バレてたんだ」
「ああ……」
「あのね……」
「ああ……」
「私……コスプレするのが好きだから……つい使っちゃったの」
「ああ……わかるぜ…コスプレは楽しいもんな」
「うん!でも迷惑だった?」
「全然そんな事は無いぞ」
俺は笑いながら答える。
「なら良かった。また使っちゃおうかなぁ♪」
そう言って白石さんはニヤリと笑ったのだった。
「で、白石さんのコスプレスキルってどんな効果なんだ?」
俺がコスプレスキルについて聞くと白石さんは答えてくれるのだった。
「あたしのコスプレスキルは、コスプレしたらその職業の能力をMAXまで上げるのよ。どう?凄いでしょ?」
白石さんは自慢げに語った。
「おお……すごいな……つまりどんな服を着ても能力アップするのか?」
「うん……まあそういうことね」
「じゃあ例えば、戦士っぽい鎧を装備すれば攻撃力とか防御力が上がるっていう解釈でいいんだよな?」
「うん……その認識であってると思うわ」
「なるほどな。参考になった。ありがとな白石さん」
「いえいえ、お役に立てて何よりよ」
「だけどよ。白石さんのスキルは応用次第じゃ無双できるんじゃないのか?」
「……実はそうなんだよね」
「やっぱりか……」
「だけどコスプレしたらその姿を維持しないといけないから不便なのよ」
「そうなのか?」
「うん。着替えるときは一度スキルを解除しないといけないからめんどくさいし」
「それは確かに不便だな」
「だから普段使いできるようなものしかコスプレしないことにしたんだ」
「なるほどな……」
「それに私自身も疲れるからね。だからできるだけしないようにしてるの」
「まあ、そうだよな……」
まぁ、スキルはともかく。
白石さんが無事にウェイトレスとして働くことができて、衣装を作ったかいがある。
今日はよく眠れそうだと俺達は別々のベッドに潜り込んで眠るのであった。
そんな時に白石さんが話しかけてきた。
「ねぇ?ずっと聞きたかったんだけどあたしと同じ部屋で寝ててドキドキしないの?」
「しないな」
「即答!?なんか悔しいー」
と、冗談を言いながら俺達は本当に眠りにつくのであった。
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