35話〜新酒場〜
35話〜新酒場〜
俺は酒場の改築を始めた。
今回も村の男達が手伝ってくれる、酒場は村の住人達の大事な憩いの場皆がマスターの熱意を感じ取り手伝ってくれる。
酒場の裏に作られた資材置き場から必要な木材を運んできて組み立てる作業を行う。慣れた手つきで次々と加工していく。
3週間程であろうか。
人手がいることで作業は順調に進んだ。
「よし!完成だ!」
「やったね!海斗!」
彩音は祝福する。
俺は完成した建物を見て感慨深くなる。
俺の作業を見学していたマスターも感嘆の声を上げる。
「素晴らしい……これ程までの技術を持っていたとは……」
「ありがとうございます」
俺は謙遜する。
「いや、謙遜することはない、自信を持って胸を張りたまえ」
「はい」
俺は言われた通りにする。
「お疲れ様でした」
俺は労いの言葉をかける。
「君こそご苦労だったな」
マスターも労ってくれる。
「ありがとうございます」
俺は改めて礼を言う。
「では中に入ってみようか」
マスターはドアノブに手をかけると勢いよく押し開けた。すると中から光が差し込んでくる。
俺達は眩しさのあまり目を細める。
やがて目が慣れるとそこには美しい光景が広がっていた。
壁一面にはステンドグラスがはめ込まれており、色とりどりの花で飾られている。床には赤いカーペットが敷かれている。
テーブル席が10個設置されていた。天井からはシャンデリアがぶら下がっていて幻想的な雰囲気を醸し出している。
「すごい……」
彩音は感動のあまり言葉を失っていた。
「素晴らしいじゃないか……」
マスターも感心している様子だった。
「気に入って頂けたようで何よりです」
俺は安堵のため息を吐く。
「これならお客さんが沢山来てくれるはずだよ」
彩音は嬉しそうに話す。
「そうだね」
俺も同感だった。
予想より良い酒場となり、これならばさらに賑わうことになるだろう。
一仕事を終えた俺達。
そしてマスターから1つの提案がされる。
「本当にありがとう。今夜は私から協力してくれたみんなにご馳走しよう。彩音ちゃん悪いんだが手伝ってくれるかい?」
「はい!このお店のウェイトレスとして頑張らせてもらいます!」
彩音はそう言うと腕まくりをする。
「俺も何か手伝えることはありますか?」
俺も出来る限りのことはしようと思い尋ねる。
「いや君は疲れているだろう。ゆっくり休むといい」
マスターは気を使ってくれる。
「わかりました。ではお言葉に甘えて」
俺はそう答えると椅子に腰掛けた。
「彩音ちゃん、この料理を運んでくれるかい?」
「はーい!」
元気よく返事をする彩音。
しばらくするとテーブルの上にはたくさんの料理が並んだ。
「さあ好きなだけ食べるといい」
マスターの言葉を皮切りに各々食事を始める。
「美味しい!」
「旨い!」
「最高!」
皆口々に称賛の声を上げる。
「ふふふ……そうだろう?」
マスターは得意げに笑みを浮かべる。
食後のデザートにはケーキが振る舞われた。
甘くてとても美味しかった。
「ありがとうございました」
俺は感謝の意を示す。
「いえいえこちらこそ」
マスターは丁寧に頭を下げた。
その後しばらく歓談の時間を過ごした後解散となった。
「お疲れさま」
俺は彩音に労いの言葉をかけた。
「海斗もおつかれさま。今日はありがとう」
彩音は微笑む。
「こちらこそだよ」
俺は返した。
彩音が働いている酒場のマスターに少しでも恩返しができてよかった。
彩音も喜んでくれているし少しは役に立てたかな? 俺はそんなことを思いながら家路についたのだった。