31話〜ものづくりは下心〜
31話〜ものづくりは下心〜
次の日。
俺は工房で裁縫道具を取り出すと新しい衣装の制作を始める。
医者の白衣のデザインを考える。
医師という職業をイメージさせる為に白を基調としたものにすることにした。
また看護師のナース服は同じく白色にした。看護師の服は医師と同じく白が基本色だからだ。
デザイン画を描き終わると早速型紙を取り出して作業に入る。
まずは袖部分からだ。腕を通す穴を作成した後襟やボタンホールなどを縫い付けていく。裾のラインを合わせて調整を行なって縫製を行う。最後に背中の部分に切れ込みを入れてファスナーを取り付ける。これで完成だ。
白衣に関しては比較的簡単に出来た。しかし問題はナース服の方である。
ナース服のデザインはかなり難しいものになってしまいそうだ。
まずスカート丈だが膝上5センチくらいのミニ丈にするかどうか悩む。短すぎると動きにくい上に見えやすくなるし長すぎると逆にバランスが悪くなりそうだ。それにパンツスタイルよりも可愛らしさが出るだろうと思うのであえてロングスカートではなく短めのものを選ぶことにする。
問題は胸元のV字形の切り込み部分である。あまり深いと下品になってしまう可能性があるので注意が必要だろう。ここは彩音に直接見てもらって確認するしかない。
彩音にデザイン画を見せると意外と乗り気で受け入れてくれる。
「これくらいなら大丈夫かな……?」
「ちょっと恥ずかしいかもだけど……海斗の為だもんね!」
彩音はやる気を見せてくれるので任せることにする。
それと、同時に彩音があることを報告してきた。
「ちょっと胸元が苦しくなってきて少し大きくなったかも」
「ほう」
俺はメジャーを俊敏な動きで取り出す。
「その…また測ってくれる?」
風林火山の【風】の如き速さで彩音に歩み寄る。彩音を抱き寄せると俺は彩音を優しく撫でる。
「俺がしっかりと測ってやる」
下心というものは厄介である。
理性を抑えられなくなる。
彩音は小さく悲鳴を上げるが抵抗はしなかった。
風林火山の【林】の如き静寂さで彩音のサイズを計測する。
俺と彩音の間で交わされる言葉はない。
俺の下心は加速する。
「ありがとう彩音」
俺は感謝の気持ちを伝えた。
サイズ測りはまだ始まったばかり。
風林火山の【火】の如き情熱で測定を続ける。
「ここの数字はこうなっているから……」
俺の指先が彩音の体を這うように動いていく。
彩音は小さく震えている。
「ごめんね。海斗……変態みたいで嫌だよね?」
彩音が俺の耳元で囁く。
「いや、別に変じゃないよ」
俺は彩音を落ち着かせるように頭を撫でる。
「本当?良かったぁ〜」
彩音は心底ホッとしたように息を吐いた。
俺は彩音の背中を抱き寄せると
「いつも世話になってるのに何も出来ないから……せめてこれくらいはさせてもらいたい」
俺は彩音の身体に触れる。
彩音の肌はとても柔らかくて気持ちいい。
彩音はくすぐったそうにしている。
「もう……くすぐったいよ……」
「悪い……じゃあ仕上げていくぞ」
俺は彩音の肩を掴んで固定すると彩音の胸元に手を伸ばす。
彩音は恥ずかしそうにしている。
俺は構わず続ける。
風林火山の【山】の如き冷静さを保ちつつ作業を進める。俺は彩音の首元に手を当てる。
彩音は少し驚いた顔をしている。
彩音は無抵抗だ。
俺は彩音の首元に顔を埋めて深呼吸をする。
彩音の甘い香りが鼻腔を刺激する。
「あっ!海斗ダメだってば……あっ……」
「動かないで……もう少しだから……」
俺は彩音の胸に触れながら彩音の反応を見る。
彩音は目を瞑っている。
風林火山の【山】の如き冷静さを維持したまま作業を進めることができた。
俺は彩音から離れると採寸結果をまとめたメモ用紙に書き記していった。
そして全てのデータが揃ったので服を縫って仕上げた。
「ありがとう。助かったよ」
「うん……私も楽しかったよ……」
彩音は少し照れている様子だった。
「さてと、そろそろ寝るか……」
「うん……そうだね……」
俺と彩音はダブルベッドの中に入り込み抱き合いながら眠りにつく。
その日見た夢の中で俺は彩音に病院の先生の姿で診察を受けていた。
文字通り、白衣の天使の姿をした彩音が目の前に現れたのだ。
俺は一瞬にして魅了された。
夢の中で俺は彩音に服を脱がされてしまう。
夢の中とはいえども恥ずかしかった。
だがそれ以上に興奮してしまった。
俺は目を覚ました後も余韻に浸っていた。
夢の中とはいえ最高だった。
今日も頑張って服を作る決意をする。