30話〜彩音のお願い〜
30話〜彩音のお願い〜
俺は自宅に設備された新たな工房である物を作っていた。
彩音が告白して成功したら、友達としてお祝いに贈ろうとしたマグカップである。
すでに作ったマグカップを渡そうとして経緯を話したら彩音にマグカップを叩き割られた。
そして、彩音は笑顔で
「友達としてお祝いに贈るマグカップじゃなくて、新しく恋人同士のマグカップを作ってね?」
「は…はい」
俺は新しく俺と彩音のマグカップを作ることにしたのだった。
「できた!」
俺は2つペアのマグカップを完成させた。
俺は出来上がったばかりのマグカップを持ってリビングへ向かう。
リビングに到着するとソファーに座っていた彩音が振り返る。
「あ!出来たんだね!」
彩音は立ち上がって駆け寄ると俺の手を取る。
「うわ!何するんだよ」
「早く見せて見せて〜♪」
俺の手を引っ張って急かすように催促する。
俺は苦笑しながら差し出す。
「はいよ」
彩音は受け取ると嬉しそうな笑顔を浮かべてマグカップを眺めていた。
「ねぇ!一緒に飲んでみたいな〜♪」
「ああ。丁度ティータイムの時間だし紅茶淹れるよ」
俺はキッチンに向かうと準備を始める。
「彩音も座ってていいぞ」
「ううん。手伝うよ」
彩音は後ろからついてくる。
そして隣に並ぶと肩が触れ合う距離になる。
「ち……近い」
「だってこうしないと海斗に触れられないもん♪」
彩音は俺にくっついてきて頬擦りしてくる。
彩音は甘えん坊だなと思いながらもドキドキしてしまう。
「彩音……」
「海斗は恥ずかしがり屋だよね♪」
「そっちだって恥ずかしいだろ?」
「全然!」
「嘘つくな」
「本当だよ!ほら!」
彩音は顔を近づけてくると俺の頬にキスをした。
「バカ!いきなり何するんだよ!」
「だってしたくなったんだもん♪」
「まったく……」
俺は恥ずかしさを誤魔化すために頭を掻く。
それから俺達は2人で紅茶を入れて飲み干す。
「美味しいね!」
「ああ。やっぱり彩音が選んだ茶葉だからかな?」
「違うよ〜!海斗の淹れ方が上手いからだよ〜!」
「そんなことはないよ」
「あるってば〜!」
俺と彩音は他愛もない会話を続ける。
それから30分くらいが経過した。
そろそろ夕食の準備をしないと行けない時間帯になっていた。
「そろそろご飯にするか」
「そうだね!今日も美味しいご飯作るよー!」
彩音がキッチンに立ち夜ご飯を作っている。
俺は彩音を眺めている。俺特製のエプロン姿も似合っていて綺麗だ。
「できたよ〜♪」
彩音は料理をテーブルの上に置く。
美味しそうな香りが漂う。
「じゃあいただくとしますか」
俺は両手を合わせて
「いただきます」
と言い食事を始めた。
「ご馳走様でした」
食器を片付けると再びソファーに腰掛けた。
「さてと……彩音」
「どうしたの?海斗?」
俺は考えていたことを彩音に話す。
俺が考えていたのは彩音のコスプレスキルの事である。
彩音は俺が作った衣装を着るとコスプレスキルでその能力を発揮できる。
「最近、村の人達風邪の人多いだろう?彩音に医者の格好させれば彩音が医師になれるのかなと思って、それで医者の格好の衣装を作ってみようかと思うんだがどう思う?」
ちなみに、俺のクラフトレベルも上がっている家を新築した時にレベルアップした。
現在、レベル3になっている。
彩音は少し考え込むと口を開く。
「うーん……やってみる価値はあるかも……。でも、医療知識も無いし」
そうか……。
言われてみれば確かにそうだよな。医療知識もないと服を作るだけではダメだったな。
俺は彩音の意見を聞いて反省する。
「じゃあ、どうすればいいんだろ?」
「うーん……でも、せっかくだし作ってみてもいいんじゃない?試してみないと分からないし」
「それもそうか、じゃあ…明日から作り始めるよ」
俺は新たな衣装を作ることにした。
その時、彩音が俺に近づき耳元で
「ナース服も作ってみてよ?」
俺はドキッとした。
不意打ちはまだなれない。
「わかったよ」
俺は了承した。
彩音は満足げに微笑む。
「ありがと海斗大好き♡」
彩音は俺に抱きつきキスをしてきた。
「彩音……」
「どうしたの?海斗?」
「なんでもないよ」
俺は誤魔化すように頭を撫でた。
すると彼女は気持ちよさそうにして目を細めていた。
「えへへっ♪」
彩音は俺に抱きついてくると首筋に吸い付くように口づけをする。
俺はくすぐったくて身を捩らせる。
「彩音?」
「海斗に印付けたくて」
「もう……仕方がないな」
「やったー!海斗大好き!もし海斗が風邪を引いたらナース服で看病してあげるね」
俺は心の中でガッツポーズをする。
決してやましい気持ちではない。
俺は彩音を受け入れると抱き締めて優しく頭を撫でてあげる。
そんなこんなで結局また彩音に流されてしまいそうになるのであった。