24話〜告白〜
24話〜告白〜
告白を成功させるためにはまず雰囲気作りが必要だ。
公園には他に人もいないし静かだ。
ここでなら誰にも邪魔されずに二人っきりになれるだろう。
俺はタイミングを見て木の陰から応援することにする。
白石さんは俺の方をチラッと見たあと目を閉じる。
そして小さく深呼吸をする。
覚悟を決めたようだ。
あとは告白相手が来るのを待つだけだ。
しばらく待っているが誰もここに来る気配がない。
「白石さん、場所、間違ってないよな?」
「……間違ってないわよ」
弱々しい白石さんの声。
彼女は凄く緊張しているらしくいつもの彼女ではない。
俺は緊張を和らげようと話しかける。
「それにしてもその服よく似合ってるな」
「……ありがと」
照れくさそうに頬を掻く白石さん。
俺の作った服を着てくれているということは信頼されている証拠だ。俺は嬉しかった。
それから世間話をするが白石さんは上の空の返事ばかりだ。
意外だと俺は思った。
ここまで、緊張している白石さんを見たのは初めてだ。
誰にでも明るく優しく接して人見知りもなく人気者の白石さん。
さすがにそんな白石さんでも告白は緊張するのか。
それもそうか…女の子だもんな。
こんな可愛い白石さんから告白させるとはどんなイケメンなのか気になるところだ。
「来ないなぁー」
それから、しばらく待つが誰も来る気配がない。
ふと、俺は思った。
俺が隣に居るから来ないのではないか?
それもそうか、俺が隣に居ては声をかけづらいのではないか?
それならばと俺は行動に移す。
この場から去ろう。
白石さん君なら大丈夫、1人でも成功する。
「白石さん、俺は帰るわ」
と、俺はベンチから立ち上がる。
するとその瞬間。
「ダ、ダメ!!」
白石さんが俺の腕を掴む。
その瞬間、彼女の手が震えてるのに気づく。
「白石さん?…俺が居ては気まずくて告白相手来ないんじゃないか?だから、俺は帰るよ」
「だから、ダメだってば!!」
さらに白石さんの腕を掴む力が強くなる。
そんなに怖いのか?
こんなに可愛い白石さんだぞ?
振られることはないだろう。
「いや、でも……」
と、俺は何とか腕を離してもらおうとするが白石さんは抵抗する。
「わかった!わかったから!」
白石さんは立ち上がり、俺の方を見てこう言った。
「告白する相手はもう来てるから!帰らないで!」
その言葉に俺は頭を悩ます。
誰もいない。
この場所には白石さんと俺しかいない。
「もう来てる?」
俺は周りを見渡すが誰もいない。
白石さんを見ると、彼女は顔を真っ赤にして涙目になっている。
「どこに?」
俺がそう尋ねると白石さんは小さな声で言った。
「目の前にいる……」
目の前?
俺と白石さんの間には誰もいない。
「どこにいるんだ?」
と、俺は再び辺りを見渡す。
そんな俺の様子を見て白石さんが大きな声で叫ぶ。
「あぁっ!もぉっ!!鈍感!!」
そして白石さんは俺に近づき俺の顔を見上げて言う。
「目の前にいるって言ってるでしょう!!」
顔を赤く染めながら白石さんは潤んだ瞳で俺を見つめる。
俺の目には彼女しか映っていない。
もしや……
「もしかして……」
「…………」
白石さんは何も言わずに顔を伏せる。
その反応を見て確信した。
彼女が今、告白しようとしている相手は……
「俺のことか!!」
白石さんはコクっと小さく首を縦に振る。
まさか彼女が俺のことを好きだなんて考えもしなかった。
でも考えてみれば白石さんは出会った時から俺に対して好意的な態度をとってくれていた気がする。
白石さんはモジモジしながら上目遣いで俺を見る。
その視線は熱を帯びておりまるで獲物を見つけた獣のようにギラついていた。
「ねぇ……?」
甘い声で囁かれる。
彼女の吐息が耳にかかる距離まで近づく。
「あたしの気持ち……受け取ってくれる?」
そう言って潤んだ瞳で見つめられる。
そして彼女はゆっくりと唇を開く。
「ずっと前からあなたのことが好きでした……付き合ってください……」
白石さんの告白。
俺は頭が真っ白になった。
白石さんが俺を好き?
「あの……返事は……?」
潤んだ瞳で俺を見つめる白石さん。
彼女を前に俺は手が震える。
心が震える。
そして、俺の答えは
「少し…時間をくれ!」
と、俺はその場に白石さんを置いて走りだした。