19話〜白石さんの恋〜
19話〜白石さんの恋〜
白石さんは最近すごく綺麗になった気がする。いつも笑顔だし肌も艶があるように感じるのだ。
そんなある日俺は白石さんの買い物に同行する事となった。理由はもちろん荷物持ちの為である。最近白石さんはお洒落に気を使うようになってきているらしい。
今まではあまり服装を気にせず適当に選んだものを着ていたらしいのだがここ最近は服装に拘り始めたとのこと。
(まぁ確かに似合ってるし良いと思うんだけど……)
今日は白石さんと服を買いに行く事になっていたので俺もついて行く事にした。
白石さんは買い物リストに書かれてある衣服を買っていくようだ。
(白石さんの服ってどんな感じの奴なんだろう?)
俺は興味津々であったが、いざ店に入ってみてその疑問は解消された。
白石さんは可愛らしいワンピースを試着していた。
白石さんによく似合っていて凄く良いと思った。本人曰くあまり着たことない服との事なので新鮮な気持ちになったらしい。
それから白石さんはいくつかワンピースを購入していた。
俺の役目は購入した衣類を持って帰る事である。
「白石さんはそのワンピース以外も買ったんだよな?」
「そうだよ」
白石さんはいくつか紙袋を持っている。
「その中には何が入ってるんだ?」
と聞くと
「下着」
という返事が返ってきたので慌てて聞き返す。
「ちょ!何でそんなものを買ってるんだよ!」
すると彼女は悪戯っぽく笑いながら答えた。
「だって恥ずかしくて♪」
と言われて何も言えなくなる俺であった。
「それに……黒瀬には見られたくないし」
と言って恥ずかしそうに俯く白石さん。
「え?どういう意味?」
「もう!乙女心わかってない!」
ぷくーっと頬を膨らませて怒る白石さん。そんな仕草すら可愛く見えてしまうのは惚れた弱みだろうか?
「今日はありがとう。助かったよ」
と感謝の言葉を述べると彼女はニコッと笑って
「どういたしまして♪」
と答えた。
俺と白石さんは帰り道を歩いていた。その途中で白石さんがこんなことを言ってきたのだ。
「ねえ黒瀬。もし私が告白されたらどうする?」
唐突に投げかけられた質問に困惑してしまう。だがここで焦ったら負けだと思い冷静に答える事にする。
「そうだな……。俺が決めることじゃないと思うから好きにすればいいと思うぞ」
(というか誰なんだよ相手は!)
「そっか……」
寂しそうな表情を浮かべる白石さん。この反応を見て確信した。間違いなく好きな相手がいる。
そんな時であった、白石さんが唐突に
「ねぇ?黒瀬?」
「なんだ?」
「実はさメイド服って作れる?」
「メイド服?まぁ、たぶん作れるけど」
「実は働いている酒場であたしがマスターに提案したんだけど企画で特別にメイド服を着て仕事をしようと決まってね?黒瀬に作ってもらいたいんだよね?」
白石さんのお願いならば断れないよな。俺は引き受けることにした。
「わかった作ろう」
「ほんとに!ありがとう!」
喜ぶ白石さんの姿を見て俺は少し安心した気持ちになった。
「あとお願いしたいことがあるんだよね」
「なんだ?」
「コスプレ用のセクシーな衣装を作ってくれないか?」
「セクシー?」
「そう!コスプレ用のセクシーな衣装!」
「なんでまたそんなものを?」
「それはね・・・・・・」
白石さんは顔を真っ赤にしながら説明を始めた。
「実はその……好きな人に見せたいなって思って」
「そうなのか」
(え?え?ええ!?)
白石さんの発言を聞いた瞬間思考回路が停止した。それと同時に胸の奥底に小さな痛みを感じた気がしたがすぐに消えてしまった。
(今のはなんだったんだろう?)
「それで作ってくれるの?」
不安そうな瞳で見つめてくる白石さんに対し俺は
「分かった。作るよ」
と答えていた。俺は何故か断ることが出来なかった。きっと白石さんには幸せになってほしいと思っているからだろう。
「よかった〜」
安堵の表情を浮かべる白石さんだったがすぐに笑顔になった。その笑顔を見ているとこちらまで幸せな気分になってくる。俺達は仲の良い友人だ。それ以上でも以下でもない。
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